2025.11.14 「素材や情報を判別できる」 パナソニックが高感度の産業用カメラを開発

イメージセンサーに搭載した独自の特殊フィルター概要 (上)特殊フィルターの断面構造図、(左下)特殊フィルターを透過した光のスペクトル情報(透過スペクトル)、(中央)特殊フィルターの光学顕微鏡写真

 パナソニック エンターテインメント&コミュニケーションは、人の眼では把握が困難な光の波長情報を捉え、被写体の詳細な色情報から素材や情報を判別できるハイパースペクトルカメラ「AG-HSV10M」を2026年1月下旬に発売する。

 新製品は、独自の圧縮センシング技術と画像処理技術により、ハイパースペクトルカメラとしては世界最高クラスの高感度を実現した。

 これにより、約550ルクスという室内の照明下でも、最大4Kの解像度で撮影できる。加えて、一度に広い範囲を撮影するエリア方式の採用により、短時間での撮影に対応できる。

 従来、人の目視に頼っていた工場などでの不良品選別や異物混入検出、さらに食品や農作物、医薬品の成分量測定などの高度な検査で、画像データ解析による精度向上や効率化を図り、産業分野での自動化や省人化の推進に貢献していく。

 プリズムやフィルターを用いた従来のハイパースペクトル画像撮影技術では、イメージセンサー上の画素ごとに割り当てられた波長の光を検出していた。

 ただ、これらの方法では、「割り当てられた波長」以外の波長の光が検出されず、感度の低下につながっていた。

 そこで、画素ごとに複数の波長をランダムな強弱で通す特殊フィルターを開発し、イメージセンサーに搭載。画像データを適切に「間引かれた」状態で検出・撮影する。

 これにデジタル画像処理アルゴリズムを使うことで、間引かれる前のスペクトル情報をソフトウエア上で復元し、高感度と高精度を両立させた。

 また、同社のデジタルカメラ「LUMIX」シリーズのテクノロジーを融合し、マイクロフォーサーズマウントを備えたボックスタイプの本体に、オートフォーカスやオート露光といった機能を搭載。レンズはLUMIXの「H-H025」や「H-HS043」に対応し、通常のデジタルカメラのような操作性を実現する。

 従来のハイパースペクトルカメラは、プリズムやフィルターなど特定波長の光を通す光学素子を採用しているタイプが一般的。この場合、波長の数に反比例して感度が低下し、工場やオフィスのような低照度な室内環境でのスペクトル情報の識別に課題が残っていた。

 また、感度や解像度の課題に加えて、撮影時間の短縮やユーザビリティーの向上、導入コストの抑制など、さまざまな現場ニーズに応える製品として提案する。