2025.12.19 AI創薬DXでシチコリンの腸脳作用メカニズムを世界で初めて示唆 富士通とキリン

 富士通とキリンホールディングスは、人工知能(AI)を用いた創薬DX(デジタル・トランスフォーメーション)技術を活用し、食品機能性研究の新たな成果を共同で発表した。体内で脳機能に関与する成分シチコリンが腸を介して神経を活性化し、脳機能に影響を与える可能性のある作用メカニズムを世界で初めて示唆する知見を得たという。

 両社の共同研究では、富士通とパートナーの仏ノバインシリコ社が開発した先進的なQSP(定量的システム薬理学)モデルを用いたバーチャル被験者シミュレーションと、細胞モデルを用いた実試験を組み合わせた。これにより、シチコリンの腸神経コリン作動性シグナルの強化やシナプス内アセチルコリン量の用量依存的増加が予測された。併せて、腸管上皮細胞と神経細胞の共培養系実験でもシチコリンによる神経活性化が確認された。

 従来の創薬や食品機能性評価は時間とコストを要し、ヒトでの有効性を高い精度で示すことが困難であった。特に動物実験規制が強化される中、AIやデータサイエンスを活用したDX技術によるin silicoシミュレーションは、動物実験に依存せずにヒトへの影響を予測する有力な手法として注目されている。今回の成果は、その応用範囲を食品機能性研究にまで拡大した点で意義深いという。

 研究成果は、シチコリンが腸を介して神経活性化を促し、腸と脳を結ぶ腸脳相関に関与する可能性を示すもので、この知見は、脳機能サポート素材としてのシチコリンの価値向上に寄与すると同時に、AI創薬DX技術の健康科学分野への展開を促す契機となりそうだ。