2026.01.19 【新春社長対談】アルプスアルパイン 泉英男社長 センサー・コミュニケーション事業の転換加速 重要なのは、従来製品から新しい製品へのシフト
アルプスアルパイン 泉英男社長
国内強靭化投資で国内生産比率向上へ 26年度もコンポーネント事業の拡大見込む
アルプスアルパインは、大手電子部品メーカーとして、「コンポーネント」「センサー・コミュニケーション」「モビリティ」の三つの事業を中核に、グローバルでビジネスを展開している。2025年8月には、今後10年を見据えた新たな企業VISION「人の感性に寄り添うテクノロジーで未来をつくる」を策定し、タグラインも刷新した。泉英男社長に、最近の事業動向や、26年に向けたビジネス戦略と中期事業戦略、今後の展望などを聞いた。(聞き手は電波新聞社 平山勉社長)
―2025年はどのような年でしたか。
泉社長 25年度上期(4~9月)は増収増益を確保でき、コンポーネント事業とモビリティ事業の売上高は上期としての過去最高になりました。最も重視している営業利益は当初は米相互関税の影響を強く受けることを想定しましたが、価格転嫁や不採算事業縮小が進み、変動費や固定費を圧縮できたため利益が改善しました。
市場別では、期初段階では相互関税がスマートフォンやゲーム機市場に与える影響を考慮し、やや固めの計画を立てましたが、関税によるマイナスは小さく、上出来だったと思います。
全体としては、25年は期初段階ではもう少し円高を予想していたし、関税による景気下ブレも懸念していたため、結果的には良い年でした。
―事業別の動向はいかがですか。
泉社長 コンポーネント事業は、カメラアクチュエーターが大きな売上比率を占めますが、レガシー製品のスイッチやエンコーダーなどもシェアが向上し堅調でした。
上期に唯一、減収減益だったセンサー・コミュニケーション事業は、景気動向より、過去の製品が終息し今年度末から多くの新製品が立ち上がるタイミングで開発費がかさんだことが利益に影響しましたが、ポートフォリオ転換への出口が見えてきたため、来期以降に期待しています。
モビリティ事業は、期初時点では関税で235億円程度の直接的なマイナス影響を被ると予測しましたが、顧客との密な話し合いを通じて価格転嫁させていただきました。大きな関税影響を危惧していた北米市場でも全体の需要に大きな変動はなく幸いでした。
―モビリティー市場は地域によって動向が異なるようですね。
泉社長 中国の自動車市場では、従来は日米欧自動車メーカーが高いシェアを有していましたが、EV(電気自動車)化とコロナという転換期を経て、中国OEMの完成度の高さと先進性、そして中国の消費者の認識も変化し、「自国製自動車を購入する」という動きが早まった結果、日米欧の顧客向けの中国モビリティービジネスはなかなか下げ止まらず、当社のTier1ビジネスも苦戦しました。
半面、北米市場は安定的な拡大が続き、今後も継続して成長できると考えています。最も不透明なのは欧州で、需要が下げ止まった感触もありますが力強い回復には欠けています。英国や東欧などでは中国系EVが急速にシェアを伸ばしています。それでも欧州EV市場はようやく下げ止まり、上昇に転じる動きになっています。
EVについては、北米ではOEM各社がモデルラインアップを大幅に変更し、EVからHEV(ハイブリッド車)にシフトしていますが、欧州はEVとHEVの双方でバランスがとれていくのではないかと思います。
―最近好調な製品は。
泉社長 一つは昇華型モバイルフォトプリンターです。顧客の数量要求に対し現状では充足できていませんが、来年度に向けて解消していきたいと思います。加えて、データセンター(DC)用光通信レンズがここ数年、需要が高止まりしてフル増産を続けており、来期も継続すると思います。
今後の期待製品では、新型ミリ波センサーがかなりの車種で搭載が始まってきています。車載以外でも農機の障害物検知やエアコンの人検知、機械の安全のための3D検知などで採用されています。プライバシー面からカメラが使えない用途などに提案していきます。
―26年に向けた事業見通しは。
泉社長 コンポーネント事業は、26年度に向けてもアミューズメントやモバイル関連の顧客需要が好調なため、上積みが期待できると思います。中国自動車市場向けも、(Tier1ビジネスとは異なり)部品ビジネスは好調ですので、生産能力を増強し足元を固めていきます。
センサー・コミュニケーション事業は、26年度もDC用光通信レンズやモバイルフォトプリンターの増産が必要になります。モバイルフォトプリンターはここ数年、年率10%ペースで成長し、26年度も同様の成長を期待しています。ミリ波センサーも増えるでしょう。これら新製品の売り上げを伸ばすことで26年度は同事業の黒字化を目指していきます。
モビリティ事業は、ややまだら模様です。本来は今年度から「デジタルキャビンソリューション」への製品転換が始まる予定でしたが、市場でのEVからHEVへのモデル転換増加や、中国自動車市場の想定以上の厳しさの影響を受けています。デジタルキャビンソリューションのプロジェクトは立ち上げ段階にきていますが、当初想定していた採用モデル数に比較し、26年度は少し厳しさがあるかもしれません。
―今年度からスタートした新中期経営計画(3カ年)の進捗(しんちょく)は。
泉社長 「中期経営計画2027」では、経営指標として、26年度にPBR(株価純資産倍率)1倍、27年度にROE(自己資本利益率)10%を掲げています。3カ年累計で戦略投資1000億円を計画していますが、このうち400億円を国内強靱化(きょうじんか)に投じ、国内工場の生産設備の競争力強化や省人化、拠点再整備などに充当し、これまで低下が続いていた国内生産比率を上昇に転じさせたいと考えています。これは地政学リスクへのヘッジにもつながります。
最も重要なのは、センサー・コミュニケーション事業とモビリティ事業での従来製品から新しい製品へのシフトであり、26年度はその重要な節目となります。これらの新製品立ち上げに向け、品質を担保しながらいかにロスを減らすかということにしっかり取り組みます。
―国内生産比率拡大への手応えは。
泉社長 私自身の忸怩(じくじ)たる思いは、これだけ円安が進んでいるのに生産コスト面で中国生産に勝てないということ。これまで中国では継続的に生産技術強化に取り組んできたのに比較し、日本はこれを少し置き去りにしてきたのではないかと思います。今後、新たな省人化や無人化の設備を導入し、生産方式を変えることで、日本で生産しても十分に競争力がある製品を作れるようになると考えています。
【アルプスアルパインのあゆみ】
アルプスアルパインは、1948年11月設立の電子部品メーカー(当時は片岡電気)。現在はグローバル従業員数約2万7000人を擁する日本を代表する大手電子部品メーカーとして、民生用電子機器、自動車、高機能モバイル端末をはじめとする幅広い分野向けに多彩な電子部品や車載情報機器などの開発・製造・販売を行う。2019年に旧アルプス電気と旧アルパインが経営統合し、統合新会社「アルプスアルパイン」として新たなスタートを切った。25年3月期の連結売上高は9904億円。










