2026.07.20 【内田洋行】オフィスDXを高度化 「SmartOfficeNavigator」、大企業30社に導入
SmartOfficeNavigatorの強みを説明する橋本部長(左)と長澤特命部長
頭部検知で利用状況を可視化
内田洋行が展開するオフィスワークナビゲーションシステム「SmartOfficeNavigator」の導入が、大規模オフィスを中心に広がっている。三菱自動車工業との協創を起点に開発し、オリンパス、旭化成、KDDI、野村不動産など大企業約30社に導入されている。Microsoft 365や既存のWi-Fi環境と連携し、社員の居場所や会議室、座席の利用状況を可視化。蓄積したデータをオフィスの改善や投資判断に生かす。最新技術として、天井カメラの映像から人の頭部を捉える独自の検知モデルも開発した。オフィスの使われ方を低コストで把握し、働き方と空間設計の最適化を支援する。
三菱自動車との協創から発展
SmartOfficeNavigatorは、在席状況や会議室、ミーティングスペースの利用状況を蓄積、可視化するシステム。2018年、三菱自動車工業が研究開発の中心拠点となる岡崎地区に新オフィスビルを建設する際、内田洋行と「人と場所をICTでつなぐ仕組み」の検討を始めた。2019年に協創し開発を進め、東京本社への展開を経て、内田洋行側でシステムとして2022年に本格発表した。
現在は大規模製造業など約30社に導入されている。三菱自動車工業に加え、オリンパス、旭化成、KDDIに導入され、2026年には野村不動産が手がける複合施設「BLUE FRONT SHIBAURA」にも採用された。特にKDDIでは、約1万3000人が働く新本社に導入され、大規模オフィスでの活用を示す代表事例となっている。

内田洋行エンタープライズエンジニアリング事業部の長澤達朗特命部長は「大企業ではMicrosoft 365やAzure、既存の認証基盤や会議室予約システムが基幹インフラになっている。これらと自然につながることが、大規模導入では重要になる」と説明する。
人と場所を結びABWを支援
フリーアドレスやハイブリッドワークが広がる一方、大規模オフィスでは「誰がどこにいるのか」「どの場所が空いているのか」を探す負担が増している。SmartOfficeNavigatorは、既存のWi-Fi環境や社員情報、グループウエアと連携し、社員の居場所をマップ上に表示する。スマートフォンやパソコン(PC)から、座席や会議室、オープンミーティングスペースを検索、予約できる。
会議室とミーティングスペースが合わせて約600カ所あるKDDI新本社では、空き状況だけでなく、デュアルディスプレーの有無など設備条件から働く場所を選べる。業務内容に応じて最適な場所を選ぶABW(アクティビティー・ベースド・ワーキング)を支え、出社後の場所探しに費やす時間を減らす。
長澤特命部長は「オフィスが広くなるほど、システムがなければ働く場所の計画を立てること自体が難しくなる。人を探す機能と場所を選ぶ機能を組み合わせ、社員の行動を支えている」と話す。
独自の頭部検知で精度向上
内田洋行は、システムの価値をさらに高めるため、実際の利用状況を捉える「頭部検知モデル」を開発した。オフィス家具や空間設計などの最新技術を紹介する国際展示会「オルガテック東京2026」で6月に初公開したばかりだ。
従来は座席ごとに人感センサーを設置する方法が一般的だったが、席数が多いオフィスでは機器費用が膨らむ。電池交換や断線対応など、運用時の負担も大きい。そこで天井に設置したカメラ1台で広い範囲を捉え、映像をAI(人工知能)で解析する方式を採用した。

オフィスでは、パーティションやキャビネットによって体の一部が隠れやすく、一般的な人物検知モデルでは精度が下がる。内田洋行は、頭部の一部だけでも検知できるよう独自に学習させた。オープンソースのモデルでは検知率が約50%だった環境で、約90%の精度を実現したという。画像解析には、画像内の人物や物体を高速で検出するAI技術を使い、約1年半以上にわたる実証を重ねた。
ICTプロダクト企画部の橋本雅司部長は「オフィスでは人の全身が見えるとは限らない。頭の一部からでも人を捉えられるモデルにすることで、実際の空間に適した精度を追求した」と力を込める。

費用を抑え投資判断に活用
東陽町オフィス4階では、約250席とオープンミーティングスペースを15台のカメラで把握している。カメラ1台を10万円とした場合、機器費用は約150万円。1台約1万8000円のセンサーを約250席に設置すると約450万円となるため、機器の初期費用を約3分の1に抑えられる計算だ。設置工事費や運用費は別途必要だが、広いオフィスほど費用面の利点が大きくなる。
カメラの画像は保存せず、在席の有無を示す数値データに変換してクラウドへ送る。個人の顔や行動を記録せず、プライバシーにも配慮した。外観も監視カメラを想起させるドーム型ではなく、スプリンクラーに近い形状を採用している。
蓄積したデータから、利用率の高いエリアや人気の設備、使われていない空間を把握できる。ディスプレー付きの席を増やすべきか、会議室と個人作業席の比率をどう変えるかといった判断に、実際の利用データを活用する。
橋本部長は「感覚ではなく、現場のデータを次の投資につなげられる。オフィスの利用状況を正確に捉えることが、より良い空間づくりの出発点になる」と強調する。内田洋行は今後、「人」「空間」「データ」をつなぐオフィスDX(デジタルトランスフォーメーション)基盤としてさらに機能を拡充し、働き方とオフィスの双方を継続的に改善する仕組みへ進化させていく。









