2020.07.21 【家電総合特集】テレビ有機ELテレビの提案本格化

各社は後半戦に向け4K有機ELを中心に訴求をしていく(写真は東芝映像ソリューション)

 新型コロナウイルスの襲来で、これまでの生活が一変し様々な業界に影響が出ているが、テレビの市場には追い風が吹いてきている。今年開催予定だった東京五輪・パラリンピックが1年延期になったことからテレビの販売に影響が出るとの見方もあったが、コロナ禍で外出自粛になり、逆に自宅でテレビなどを視聴する機会が増えていることも背景にある。主要各社も高精細4Kテレビの20年モデルを6月から順次発売しており、今年後半に向け拡販していく考えだ。

 主要テレビメーカー各社は東京2020大会に向けて大画面高画質テレビの拡販を目指していたが、新型コロナにより状況は一変し、当初の計画通りにいかない状況になった。特に春先は中国のサプライチェーンが停止したことで、製品供給などにも支障をきたした。

 さらに東京2020大会の延期によって、スポーツイベントを契機にテレビの拡販を狙っていたメーカー、流通各社は販促の見直しに追われることになるが、逆に外出自粛要請がテレビ視聴の増加につながって、それと同時にテレビの買い替えや買い増しにもつながっている。

 実際に電子情報技術産業協会(JEITA)の出荷統計でも直近発表の6月まで順調に推移。薄型テレビ全体に占める4K比率は半数以上を占め、金額構成比では8割までになっている。液晶テレビに加え、より高画質な映像が楽しめる有機ELテレビも2桁増が続くなど順調だ。18年12月にスタートした新4K8K衛星放送対応テレビは4Kテレビ出荷台数の98.2%を占め、発売開始から累計311万6000台となった。

 主要各社の動きを見ると、4K液晶テレビに加え、有機ELテレビの提案を本格化している。6月下旬からは主要各社の4K有機ELテレビ20年モデルが続々と発売されており、選択肢の幅が広がってきている。

 最近のテレビの特徴から、各社とも画質と音質にさらに磨きをかけるとともに、インターネット接続によるスマート機能を充実させている。AIを活用し画質や音質を良くする動きも活発だ。

 特に有機ELは液晶よりも高画質なテレビとして各社が注力。有機ELは自発光パネルの特徴を生かして、高いコントラストと階調表現ができる。各社ともパネル駆動技術やあらゆる映像を4K以上の品質に変換する超解像技術に磨きをかけている。高画質や高音質化に向けては、AIの活用なども本格化しているところだ。

 薄型パネルの特性を生かした音響システムも注目だ。画面に見合う音づくりでも特徴が出ており、スピーカなどのハード面だけでなくデジタル処理技術などのソフト面の技術でも、メーカーごとの製品開発コンセプトに違いが出る。

 地上デジタル放送や衛星放送などに加え、動画配信やVOD(ビデオオンデマンド)といったインターネット動画サービスも拡大しており、視聴する人も増えている。この流れを受け、各社は、動画配信サービスを高画質で視聴できる機能や簡単に番組視聴ができる機能やサービスにも力を入れている。

 各社の動きを捉えると、本格的に有機ELテレビの時代に入ってきたことが分かる。同時に4Kよりもさらに高精細の8Kテレビの動きにも注目だ。

 パナソニックは4K有機ELビエラ2シリーズ4機種を順次発売中。独自のパネル制御技術を強化して、高コントラストな映像を実現した。上位機はスピーカにもこだわり、包み込まれるような立体音響が楽しめる。

 ソニーは4K有機ELブラビアで48Vから77V型まで豊富なサイズ展開を図る。独自のパネル制御技術で高画質化を図るとともに、画面を震わせて音を出す独自の音響システムも評判が良い。

 東芝映像ソリューションは、4K有機ELレグザで幅広い製品群を用意。最上位シリーズは77Vから48V型までそろえた。クラウドのAIを使いこなした高画質化技術で放送に合わせ画質を調整するなどして、他社にない技術やサービスを前面に出す。

 これまで液晶テレビで4Kから8Kまで展開していたシャープは今年、4K有機ELテレビを発売し市場参入。8Kで培った技術を生かし高画質化を図っている。

 ヤマダ電機と独占販売契約をする船井電機は、4K放送の録画ができるハードディスク内蔵の4K有機ELテレビで差別化を図る。海外メーカーではLGエレクトロニクス・ジャパンが4Kだけでなく、初の8Kチューナを内蔵した8K有機ELテレビを投入。AI技術も駆使して高画質・高音質化している。

 テレビ市場は東京2020が延期されたものの着実に伸びてきており、今後もさらなる拡大が見込まれる。