2020.10.30 【石油暖房機特集】ウィズコロナで需要増期待

デザイン性も高まっている石油ファンヒーター

 新型コロナウイルスと共存する「ウィズコロナ」時代の、初めての本格的な冬を迎えようとしている。石油暖房をはじめとする暖房機器にとっても、これからが勝負。寒波の到来といった天候要因で需要が左右される傾向は変わらないが、今年はコロナで激変した社会環境がもたらした在宅勤務の定着や巣ごもり消費が、暖房機器にも影響を与えると予想されている。素早い立ち上がりと高い暖房能力で足元から暖める石油ファンヒーターも、今年は需要の増加が期待される製品だ。

 日本ガス石油機器工業会によると、今年度の石油ファンヒーターの出荷台数は、前年比11%増の184万7000台と予想する。暖冬となった昨年度は156万6000台まで落ち込んだが、そこからの反転予想だ。

 石油ファンヒーターは毎年、12月に需要のピークを迎える。寒波の到来にもよるが、年を越えると暖房機器に対する消費者の購買意欲が極端に下がる傾向が強い。「冬に備える」という意味では、やはり年内が勝負になる。

 今月23日に気象庁が発表した11月から21年1月までの天候見通しでは、北日本は寒気の影響を受けにくく、気温は平年並みか高いとしている。東・西日本と沖縄・奄美はほぼ平年並みの見込みで、11月は平年並みか高く、12月は平年並みか低いという予想だ。

 1カ月ごとに見ると、11月は暖かい日が続きそうな予報だが、12月は北日本を除く地域で冷え込む可能性がある。需要期に冷え込みが強くなると、石油ファンヒーターの販売も急激に増える。特に今冬は、在宅勤務の仕事環境を整える関係から、石油ファンヒーターにも注目が集まりそうだ。

 石油ファンヒーターもインテリア性が向上している。質感やカラー、リビングに置いていても環境を損なわないシンプルな存在感など、変に目立たず、シーンに溶け込むデザインが重視されている。

 同時に、石油ファンヒーターは、新規購入というよりも買い替え・買い増し需要が中心。ダイニチ工業が実施した購入者アンケートでは、19年度で70.3%を50代以上が占め、14年度から15ポイント増加している。石油ファンヒーターを既に利用しているシニア層が買い替え、または買い増ししている状況がうかがえ、それを意識した視認性や操作性の向上も新製品の開発では重要になってくる。

 インテリア性訴求

 石油暖房としては、ストーブに対する評価も変化してきている。昔ながらのデザインが再評価されるとともに、アウトドアブームも後押しし、コロナやトヨトミが提供する対流型石油ストーブもじわりと人気が高まってきている。電源不要でどこにでも置けるため、広い空間を優しく暖める暖房能力に加えて、インテリアの一部としても、家庭だけでなく、カフェなどでも使われるようになってきた。

 灯油を給油する必要がある石油暖房機器だが、大型タンクの採用で給油頻度を減らせるなど使い勝手も高まっている。

 エアコンのような暖房機器にはない暖房能力やインテリア性を備える製品として、石油暖房機器も、この冬を乗り切る選択肢の一つとして検討する価値は十分ある。