2020.11.13 【ルームエアコン特集】 暖房能力向上で需要増、衛生・清潔、換気、加湿など訴求

家電量販店の売り場でもコロナ禍で訴求力のあるキーワードを展開

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快適性の体感提案も活発快適性の体感提案も活発

 冬の暖房シーズンが本格化し始めた。暖房機器の主力として定着してきたルームエアコンは、快適性と省エネ性に加え、新型コロナ禍で訴求力を増す衛生・清潔に貢献する機能や室内に外気を取り込む機能など、再評価されている面もある。新型コロナウイルスの感染も再拡大しつつあり、今冬は「おうち時間」が一層増加し、エアコンの出番も例年以上に増えそうだ。

 冬のエアコン商戦に活気

 「10月の出足は好調だ」。コジマの中澤裕二社長は、市況感を分析し、こう力を込める。

 郊外型店舗が中心のコジマにとってコロナ禍は追い風となった。先月発表された20年8月期業績は、予想を上回る増収増益を記録。9月は昨年10月の消費税増税前の駆け込み需要との対比で落ち込んだが、逆に10月は一気に復調。中でもエアコン販売は前年からほぼ倍増した。

 同じ郊外型中心のケーズホールディングスも同様の傾向だ。エアコンの販売は10月、2倍以上となり、全体をけん引した。都市型のビックカメラでもエアコンなどが好調としており、都心部にも客足が戻って、冬のエアコン商戦が活気づいてきた。

 今年度上期は過去最高の出荷量

 日本冷凍空調工業会(JRAIA)の統計では、今年度上期(4-9月)のエアコン出荷台数は前年比1.8%増の642万4000台となり、過去最高の出荷量を記録。8、9月の出荷は前年割れとなったものの、在宅時間の増加や特別定額給付金の後押しもあって出荷を押し上げる結果となった。

 現在、東京や大阪、北海道などで新型コロナの感染者数が再び増加傾向にあり、「第3波」の懸念も高まっている。インフルエンザも流行する時期だけに、「3密」を避ける行動に対して消費者はより敏感になっている。

 おうち時間を快適に過ごす

 おうち時間を快適に過ごそうとエアコンの使用頻度が増え、より快適・省エネを求めて買い替える人も増加するだろう。在宅勤務のために、未設置だった部屋にエアコンを新設するなどのケースもまだ多いはずだ。北海道や東北などの寒冷地でも導入が進み、今冬はエアコンの販売がかなり増えることも予想される。

 コロナ禍に合った新製品訴求

 メーカーも新製品ではコロナ禍に合った訴求を展開している。

 パナソニックは新しい「エオリア」Xシリーズで、排熱を冷暖房に活用し、省エネ性に貢献する「新・エネチャージシステム」を搭載。巣ごもりで冬場に長時間使うことで気になる電気代の削減を訴求する。同時に、加湿空気清浄機と連携した運転を可能にし、室内をより清潔に保てる機能も強化している。

 ダイキン工業は、注目を集める「換気」をキーワードに、外気を室内に取り込めるエアコンとして「うるさらX」Rシリーズを今月発売した。加湿機能「うるる加湿」のために、室外機に搭載する加湿ユニットから取り込んだ外気を室内に送り込み、住宅の換気扇などと組み合わせた換気の実現を提案している。

 富士通ゼネラルの新しい「nocria」Xシリーズは、クラウド側と本体側の二つのAI(人工知能)を使う「ダブルAI」による快適な気流制御を実現。おうち時間を手間なく快適に過ごせる機能だ。熱交換器に付着したカビ菌や細菌を除去する「熱交換器加熱除菌」に加え、空気中のウイルスやカビ菌などを除去する「プラズマ空清」で室内を清潔に保つことも訴求する。

 冬期のエアコン需要拡大

 ここ数年で冬期のエアコン需要は拡大した。夏場の季節商材から、冬には暖房機器としても使える、通年商材としてのポジションにエアコンは定着したと言える。

 室外機の凍結防止機構を備え、厳しい寒さでも室内に暖かさを届けるために、暖房能力を高めた寒冷地モデルの普及も進んでいる。寒冷地に限らず売れるようにもなっており、高い暖房能力を求めるユーザーからの支持を集めている。

 この冬は、こうした今までのトレンドがコロナ禍で底上げされる可能性が高く、エアコンの動きはこれまで以上に注目したいところだ。