2021.01.08 「地産地消」の水素ステーション開設地元再エネで埋め合わせ、東邦ガスが国内初

開設した豊田豊栄水素ステーション

 愛知、岐阜、三重の3県に都市ガスを供給する東邦ガス(名古屋市熱田区)は、地元の再生可能エネルギーなどを活用し、生産時の二酸化炭素(CO₂)排出を実質ゼロにした「CO₂フリー水素」を供給する水素ステーションを開設した。地域の燃料電池自動車(FCV)などに供給することで、エネルギーの「地産地消」にもつながる。同社によると、こうしたステーションは国内で初めてという。

 開設したのは、愛知県豊田市の「豊田豊栄水素ステーション」。水素供給インフラ整備の推進役を担う「日本水素ステーションネットワーク」(東京都千代田区)と共同で建設した。

 ステーションは敷地約550平方メートル。FCV1台につき3分程度で充てんできるほか、通常のFCVより燃料タンク容量が5倍程度大きい燃料電池バスにも対応可能だ。大型タンク向けに高圧水素を大量に保有できる設備を備えているという。

 東邦ガスとしては、15年5月に愛知県日進市や豊田市(岩谷産業と共同運営)に開設して以降、5カ所目の水素ステーションになる。19年3月に開設した「セントレア水素ステーション」(愛知県常滑市)は、経産省の燃料電池バス充てん用の補助金制度が初めて適用されたケースでもあった。

地元再エネの削減分で相殺

 今回開設したステーションは、東邦ガスの都市ガスからステーション内で水素をつくるオンサイト方式。1時間あたり300立方メートルを製造できる。

 都市ガスと水蒸気を混合し反応させるなどして、水素をつくるが、同時にCO₂が排出される。この排出分を、地元の再エネなどによる削減分で埋め合わせることで、「地産地消のCO₂フリー水素」を実現していることが、今回のステーションの特徴だ。

 埋め合わせには二つの制度を利用する。その一つが、民間が発行するグリーン電力証書だ。CO₂削減効果を「環境付加価値」として取引可能にしたもので、豊田市内の市立中学校の校舎などに設置された太陽光発電設備による削減効果を、東邦ガス側が購入する。

 もう一つが、経産省中部経済産業局が独自に進める「中部産CO₂クレジット」制度。

 省エネ設備の導入や再エネの活用でCO₂の排出削減できた量や、適切な森林管理による吸収量を、国が認証する「J-クレジット」制度の中部地域版だが、クレジットの発行や購入を、中部地域内の企業や団体などに限定することで、クレジットの「地産地消」を進めることができる。

 同局エネルギー対策課の担当者は「知名度やブランド力向上に向け、イベントなどで広報して、活用を促進していきたい」とする。
 制度は14年10月から導入。名古屋市内の商店街のイルミネーション点灯の電力使用などで活用され、既に累計の取引量はCO₂約6万5000トン分(20年11月時点)に達している。

 東邦ガス広報部は「エネルギーの地産地消を進める豊田市とニーズが合致して協力できた。国の脱炭素社会の方針に貢献していくための取り組みの一つだ」と話す。ステーションではまず、豊田市の公用車への水素供給から始め、順次拡大させていくという。