2021.02.12 THKがロボット事業拡大産業用/サービス用の両分野で
THKの様々なワークに対応する小型ロボットハンド「ならいハンドユニット」(日本ものづくりワールド2021)
THKは、直動案内機器「LMガイド」や、LMガイドにモーターや制御装置などを組み合わせたシステム製品(電動アクチュエータ)で培った技術やノウハウを活用し、産業用、サービス用両分野のロボット事業拡大に取り組んでいる。
「機械要素技術展」を中心とする製造業の専門展示会「日本ものづくりワールド2021」(3-5日、千葉・幕張メッセ)にも出展し、ルートテープ不要のAGV(無人搬送車)などを紹介した。
人手不足が年々深刻化し、製造現業では産業用ロボットの導入機運が高まっている。一方で新型コロナ感染を警戒する生活様式が必須となり、サービスロボットによる、人同士の接触を必要最小限にとどめるサービスが求められる。
ロボットハンド研究
同社のロボット事業は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とロボットハンドに関する共同研究を行い、国際宇宙ステーション「きぼう」船外でのREX-J実験に使用されるなど、先駆け的な役割を果たしている。グループにはロボット事業を主力とするTHKインテックスも擁する。
産業用ロボットではAGV「SIGNAS」を昨年9月、市場に投入。東急建設と共同で開発を進めてきた建設現場用搬送ロボットだが、建設現場のみならず、工場など幅広い需要を見込んで製品化した。
SIGNASは、内蔵カメラで目印となるサインポストを認識しながら自律移動する。多くの製造・物流現場で用いられているルートテープを必要とするAGVとは異なり、独自の自律移動制御システムを搭載して新しい誘導方式を実現。積載タイプとけん引タイプの二つをそろえる。
部品の微細化が進む中で電子部品組み立て用ピック&プレースロボット「PPR」の受注も昨年9月に開始した。
電子部品を構成する微細なワークを吸着し、ベースへの移載や組み立てを素早く正確に行うロボット。電子部品組立工程の生産スピード向上とワークダメージ低減を両立できる世界初の工程最適型ロボットとして開発された(特許出願中)。昇降、回転の基本的動作に加え、ワークに掛かる力を測定する力センサーなど各種センサー、電磁弁、制御モジュールといったピック&プレースに必要な要素がオールインワンになっている。
また、様々な形状・材質のワークに対応する小型ロボットハンド「ならいハンドユニット」を開発中で、日本ものづくりワールドに参考出品した。
自律搬送ロボット
サービスロボットでは、独自開発の走行台車と昇降リフターを組み合わせた自律搬送ロボット「Lifter付きSEED-Mover」の受注を昨年7月に開始。走行台車は狭い所でも全方向移動、360度旋回ができ、昇降リフターは搬送物の昇降に加え、前後の引き出し動作が行える。
外食産業での配膳・下膳用、オフィス内ではフロアを行き来する配送台車に拡張でき、用途に応じて様々なシーンで活躍する。例えば、レストランでは昇降リフターに積載した飲み物を指定の場所まで自律移動で運び、配膳時には受け取る人に合わせてリフターが昇降し高さを調整する。
昨年8月から受注を始めたのは、接触による感染リスクの低減に貢献する「検温ロボット」だ。
ロボット頭部にサーモグラフィカメラを備え、遠隔操作機能付きAI画像認識技術により、マスクで顔を覆った状態でも顔認証による検温が可能。発熱者を発見した場合は遠隔操作でオペレータが応対する。
吉忠マネキン(京都市中京区)と共同で、自律移動が可能な次世代型ディスプレイショーケース「ディスプレイロボット」を開発し、昨年10月に受注を始めた。「見る、動く、展示する」の三つの機能を搭載した自律移動できる次世代ロボットで、主に商業施設やホテル、空港などで新形態の接客スタイルを創り出す施策としての利用を見込む。