2021.02.24 【複合機&プリンタソリューション特集】新たな価値提案で成長加速DXなどがチャンスに
DX化のけん引役を担うデジタル複合機
新型コロナウイルス感染拡大が続く中で、複合機やプリンタなどを基盤事業とする事務機各社では、ビジネスモデルの転換点を迎えている。デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)、ニューノーマル(新しい日常)をビジネスチャンスと捉え、新たな価値提案による成長を加速させる。
新型コロナウイルスの感染拡大で、市場環境が大きく変わる中で、ウィズコロナ、アフターコロナを見据えた戦略が求められている。働き方改革が進み、テレワークが定着するなど市場環境は、急速に変化。従来型の「モノ」主体のビジネスモデルからソフト、サービスを主体とした「コト」のビジネスへの転換が急がれている。
ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)が先ごろ発表した20年(1-12月)の複写機・複合機の国内出荷台数は、50万台を割り込み、49万台、前年比92.7%と低迷した。市場回復の兆しが出ていたものの昨年4月からの新型コロナウイルス感染症拡大で、在宅勤務、テレワークが拡大、オフィスのプリント需要が減少したことが原因となっている。
しかし、コロナ禍に対応するため、新たな働き方、DXはビジネスチャンスにもなる。働き方改革関連法案は19年4月に導入され、昨年の4月からは、大企業に続き中小企業まで拡大された。働き方改革の進展に伴い、遅れていた中小企業でもIT化の動きが出てきたが、昨年4月の緊急事態宣言、8月以降のコロナ第2波、さらに今年1月の2回目の緊急事態宣言で状況は大きく変わり、働き方改革、企業のDXは待ったなしの状況になってきている。
確かに、在宅勤務やテレワークは拡大したものの、真のDX化はまだ緒に就いたばかりと言える。日本の企業の90%以上を占める中小企業では、特に専任の情報システム要員がいないため、DX、働き方変革が遅れているのが現状だ。先ごろ大手コンサルティング会社のアビームコンサルティングが行った日本企業のDX調査では、DXが成功しているという認識はわずか7%にとどまっていた。
経済産業省では「2025年の崖」で、DX化を進展できなければ大きな損失になる、と指摘している。今年9月にはデジタル庁が正式発足する。今後、電子申請、電子署名などが進む見通しだが、DX化を進めるための問題点、課題も多い。
富士ゼロックスでは、お客のコロナウイルスの影響を分析している。働き方(在宅勤務、出張規制など)では「社外からセキュアなアクセスができない」「オンラインでの会議ができない」「紙での稟議(りんぎ)申請や契約承認が回らない」など、営業活動では「外出先で印刷ができない」「受注FAX情報が出社しなければ分からない」、また、情報システムでは「テレワークに対応したインフラがない」「セキュリティリスク対策・対応ができていない」などがお客の困り事になっている、と分析。「いつでも・どこでも働ける環境」から、さらに「DXやセキュリティのお困りごとに対する解決策」の必要性を挙げている。
こうしたか様々な課題への適切なソリューションこそが、新たな市場をつくりだすチャンスにもなる。
事業構造転換など各社、市場の変化に対応
各社では、市場の変化に対応した戦略を大きく打ち出そうとしている。
リコーは、4月から第20次中期経営計画「飛躍」をスタートさせ、「デジタルサービスの会社」への転換を加速させる。同時に当初計画を前倒しでカンパニー制を導入する。これにより「事業構造の転換と資本収益性の向上をさらに進め、成長へのスピードを上げていく。
21年度から22年度の20次中計では「飛躍」を掲げ、「持続的成長とさらなる発展を確実なもの」にし、「デジタルサービスの会社」への転換を加速させる。
カンパニー制では、事業ドメインごとの五つのビジネスユニットとグループ本社に組織体制に刷新し、各ビジネスユニットが開発から生産、販売までの一貫体制を構築する。また、DX投資、デジタル人材育成にこれまで以上に力を入れる。「デジタルサービスの会社として最適な形を追求、〝飛躍〟にふさわしい成長に向けスピードを上げていく」方針だ。
富士ゼロックスは、4月1日付で社名を「富士フイルムビジネスイノベーション」に変更する。同時に国内営業部門と国内の全販売会社31社を統合し、「富士フイルムビジネスイノベーションジャパン」を設立する。
同社および国内の全販売会社は、お客との強固な関係を築く中で、多種多様な業種・業務における経営課題を解決する経験と実績を蓄積してきた。今回の統合により、国内営業に関わる全ての知見やノウハウなどを含む総力を結集し、全国統一オペレーションのもと、新たな価値提供を加速し、これまで以上に迅速かつダイナミックにニーズに応え、地域に根差した営業活動も継続、強化していく。
コミュニケーション・働き方をリードする新たな価値、進化するデジタル技術と長年培ったドキュメントに関する知見を生かしたDX、高度なセキュリティや最適なテレワーク環境を実現する高付加価値なソリューションサービスなどをワンストップで提供する。こうした戦略を実現していくため、昨年12月1日には、東京都江東区豊洲に、国内営業のフラグシップとなる「センターオフィス」を開設した。
キヤノンマーケティングジャパンは、紙文書のデジタル化に向け、複合機、LBP(レーザービームプリンタ)などのドキュメントソリューションとITソリューションの融合で、お客のビジネス改革を支援する。ハードからソフト、サポート体制まで一貫して対応できる強みが発揮していく。デジタルシフト、DXへの投資を加速する。
セイコーエプソンは、強化領域に経営資源をアロケーション(配分)する。ニューノーマル時代に対応、「Exceed Your Vision」をもとに「未来の人々が望む社会を実現するため、新しい発想や、やり方で挑戦する」方針。
コニカミノルタは、強みの画像技術とIoT、AI技術を組み合わせた画像IoTプラットフォームFORXAI(フォーサイ)の提案を開始した。同社の強みであるイメージング技術をベースに、オープンイノベーションを推進、社会のDXを加速させる。
東芝テックは、1月1日付で「プリンティング・ソリューション事業本部」の組織名称を「ワークプレイス・ソリューション事業本部」に変更した。プリンティング主体のビジネスモデルから脱却し、オフィスの「働き方改革・生産性向上」を支援するクラウドプラットフォーム基盤の構築などにより、新たなサービスを提供していく戦略だ。同社は「消す印刷」と「残す印刷」を1台に搭載、紙のリユースを実現したハイブリッド複合機をオンリーワン商品として普及に力を入れる。
京セラドキュメントソリューションズでは「テレワークに最適なコンパクトで機能的な製品を新たに市場投入する」など、新たな働き方にフォーカスした戦略を展開する。
業界団体のビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)では、昨年11月にワークスタイルの変容に対して、三つの取り組みを発表した。これは「ドキュメント真正性基盤プラットフォーム」「MFPゲートウェイ基盤プラットフォーム」「動脈物流共同化活動」である。ドキュメント真正性基盤プラットフォームは、ドキュメント・データの信頼性や安心・安全を、先進技術を用いて担保することを目的としている。
また、MFPゲートウェイ基盤プラットフォームは、ユーザーの勤務場所・勤務時間の制約を受けることなく、いつでもどこでもどの機種でもプリント・スキャンができる環境づくりを目指している。動脈物流共同化活動は、ホワイト物流、CO₂削減による地球温暖化対策への貢献を目指している。
複合機ビジネスが大きな転換点を迎えている。新型コロナウイルスの感染拡大で、働き方改革、テレワークが加速、働く環境は一変した。オフィス市場をけん引してきた複合機ビジネスは、ニューノーマルにフォーカスした新たな成長が期待される。