2021.05.26 【次世代自動車用部品特集】製品動向

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー

回路部品
ECU搭載点数増で小型化進む

 回路部品は、CASEを見据えた新製品開発が活発。特にADAS/自動運転技術の高度化やxEVなどに照準を合わせた技術開発に力が注がれる。

 最近の自動車は、自動運転に向け、ADASなど安全系の機能強化が進展。ECUの搭載点数が増加し、小型化も進んでおり、コンデンサーや抵抗器、インダクターなども車載グレードでの小型化が要求されている。

 ADAS/自動運転技術の高度化では、通信品質を向上させ、安全性を高めることが必要。このため、車内ネットワークの高速化、高周波化に対応し、ノイズ対策部品も小型・高性能品の開発が進展している。

 ミリ波レーダーユニットなどでは、小型化のために高密度実装対応が求められ、回路基板は高周波回路と一般制御回路を同一基板に形成するハイブリッド基板がMSAP工法を使って製造されている。小型部品で回路構成することでユニットの大幅な小型化が追求されている。

 xEVは動力にモーターを使用し、コントローラー(制御装置)、発電機、インバーター、二次電池、DC-DCコンバーター、充電器などがモーター駆動関連の重要構成要素となる。こうしたパワー系ユニットで使用される電子部品は、高温環境、振動・衝撃など自動車特有の要件への信頼性が強く要求される。

 アルミ電解コンデンサーでは、一般的な電解液タイプに加え、最近は導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーや導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーの新製品開発が活発化している。

 コイル、トランス関連は、信頼性の高いIGBT用絶縁トランス、ハイパワーで高性能の電流センサー、高効率のリアクターやチョークコイルなどの技術開発が進展している。抵抗器は、高信頼性のハイパワータイプ、低抵抗のシャント抵抗器などが搭載される。

 いずれも、SiCやGaNなどの新しいウエハー材料を用いた高耐圧、高周波、高効率でスイッチングするパワーデバイスの技術トレンドに沿った新製品開発に力が注がれる。

接続/変換部品
スイッチ/タッチパネル、次世代HMIに対応へ

Z軸可動フローティングタイプコネクター

 接続部品では、CASEに照準を合わせたコネクターや、次世代HMIに対応するスイッチ/タッチパネルなどの開発が活発。

 コネクターは、車の高機能化に伴うデバイス搭載量増加に対処するための省スペース化や、高速伝送対応、大電流/高電圧化などが求められ、これらに対応した高品質・高信頼性コネクター開発が進んでいる。

 ADAS/自動運転用途で重要な車載カメラは、車1台当たりの搭載個数増に加え高性能化が顕著で、これらの高速デジタルセンシングカメラ向けのカメラモジュールコネクターやカメラEUCインターフェースコネクターなどの開発が進む。各社は高画素車載デジタルカメラで要求される3ギガbpsなどの高速伝送性能を実現しつつ、小型・高性能で防水性にも優れた製品開発に力を注ぐ。

 電動車用は、車載インバーターやモーター、バッテリー周りに使用される大電流/高耐圧対応製品の開発が活発。定格850V対応品などが開発されている。

 EVの本格普及では、1充電当たりの走行距離向上が重要。このためEV用部品は軽量化ニーズが強く、小型・軽量の車載ECU用コネクターなどの開発が進む。エンジンルーム周辺などの用途向けに125度/150度対応の高耐熱FPCコネクター開発も活発だ。

 スイッチは、安全を重視した使い勝手の良い操作スイッチ開発が進む。高級車向けは、静粛な操作音、滑らかな操作感触の発現なども重視される。タッチパネルは操作性や安全性の観点からフィードバック機能付きの開発が進展。加えて、ディスプレーモニターの大画面化や曲面化トレンドに対応するため、静電タッチパネルの大画面化や曲面対応への技術開発が加速している。

 変換部品では、将来の完全自動運転車での車室内のリビングルーム化に対応し、車載スピーカーの薄型・軽量化が追求されている。

車載通信モジュール&センサー
車載通信システム、V2Xと5Gの応用進展

車載用5G NRモジュール

 電子部品各社は、ADAS/自動運転技術の高度化や、コネクテッドカーへの進化などを背景に、車載用通信モジュールや車載用センサーの技術開発を活発化させている。第5世代高速通信規格5Gに対応した車載用通信モジュール開発も進展している。

 車車間や路車間の通信を行うV2X通信モジュール(IEEE802.11p規格)は、日本市場向けに760メガヘルツ帯モジュールが実用化され、欧米市場向けの5.9ギガヘルツ帯対応品の開発も進んでいる。同規格は、高速かつ高い信頼性、セキュリティー性などが特長だ。

 さらに最近は、完全自動運転実現に必須のC(セルラー)-V2X機能を搭載した「車載用5G NRモジュール」の開発も進展している。

 完全自動運転車の実現に向け、V2Xシステムと5Gを応用した新たな車載通信システムの早期確立が求められているが、一方で、これを実現するには従来の4G LTEに対する通信機能の高度化とV2X対応による多機能化で複雑な処理が必要となるため、自己発熱でモジュールが高温化してしまい、本来の製品のパフォーマンスが発揮できなくなる課題があった。

 さらに、多機能化に伴うモジュールの大型化に対して、顧客基板への実装を考慮したモジュール設計の最適化も求められている。こうした課題を解決する車載用5G NRモジュールが開発され、一部、サンプル展開も始まっている。

 衛星測位システムでは、複数の衛星測位システムを受信可能なGNSS(全地球衛星測位システム)対応モジュールやアンテナの開発が進んでいる。

 自動走行レベル3以上の自動運転車で必須とされるLiDARは、既存の機械式LiDARと比較して小型・堅ろうでコスト面でも優位なソリッドステート式LiDARの開発に乗り出す企業が増加している。

 LiDARは、レーザー光を物体に反射させ、戻ってくるまでの時間を計測して距離を測定する。