2021.07.16 【電子部品技術総合特集】5G用部品動向各社、5G本格化に照準

 電子部品メーカー各社は、第5世代移動通信規格5Gの本格化に照準を合わせた技術開発を活発化させている。各社は、5Gスマートフォンや5G通信基地局などに使用される電子部品開発を進めるとともに、5G通信が創出するさまざまなソリューションサービス、さらに車載5Gなどをターゲットとした先行開発を推進し、5G関連ビジネスの拡大を目指す。

 5Gは、超高度情報社会に向けた次世代通信方式。超高速大容量、低遅延、多数同時接続などを特長とし、従来のLTEの約1000倍の大容量化などが想定されている。

 5Gの実用化は、先行していた海外市場に加え、日本でも2020年3月以降、主要通信キャリア各社が商用サービスを順次スタートし、その後も基地局整備に合わせ、カバーエリアを順次、拡大させている。20年10月には米アップルが、5G通信対応端末の「アイフォーン12」を発表した。今年21年は「5G本格普及元年」と位置付けられ、基地局整備の進捗や主要スマホ各社の5G対応モデルの拡充などにより、5G市場が一層活性化していく見込み。昨今のコロナ禍も、5Gシフトをより加速させると見られている。

 現状の5G対応スマホは、Sub6端末が主流で、ミリ波端末はフラッグシップモデルに限られているが、主要スマホメーカーのミリ波端末の市場投入に合わせ、22年以降、ミリ波端末の普及が本格化していくことが予想されている。

 既存の4Gと比較すると、5Gではより高い周波数で超高速通信を行う。そのため、小型基地局を数多く設置する形でのエリアカバーが必須とされ、基地局の設置台数が大幅に増加する。

 5G通信は、スマホ技術の進化にとどまらず、5G通信の本格普及を契機とした「ポスト5G」としてのさらなる多様なサービスへの波及も想定されている。

 5Gは同時多接続や低遅延などの特長から、IoTの普及促進への寄与も期待されている。5G技術は、自動車の自動運転技術高度化にも大きな役割を果たし、将来の完全自動運転車実現に必須の技術とされる。

 5Gは、「Society5.0」の基幹インフラとして社会に定着するとともに、CPS/IoTとの組み合わせによって新たな価値創造につながることが期待されている。

 こうした動きに対応し、電子部品各社は、5Gに照準を合わせ、高周波/ミリ波対応や高速大容量伝送、高耐熱、優れた耐ノイズ性能などのニーズに対応する新製品開発を加速させている。自社のコア技術を活用し、高性能なデバイスの開発・提案を進めることで、5G関連市場での業界標準の獲得を目指している。

回路部品
超小型チップの搭載化率が上昇

NFC用の低抵抗積層チップインダクター

 スマホでは、小さい面積に多機能を搭載するため、高密度実装化が進展している。特に5G用スマホの実装密度は一層高まり、回路部品は超小型チップ部品の搭載化率がより上昇している。

 積層セラミックコンデンサー(MLCC)は、高級機種では1000個以上が搭載され、チップ抵抗器も400個内外が実装される。

 これらには静電容量や抵抗値、さらには定格電力、定格電圧などにより、各種サイズが混在している。

 高密度実装化を推進するため、小型で大容量化するMLCC、小型で高耐電圧化するチップ抵抗器を使用する傾向が高まっており、1608サイズから1005サイズの搭載点数を削減し、0603サイズ、0402サイズといった超小型チップの搭載点数の比率を上げる方向にある。この傾向は、5G用スマホで一段と強い。

 電源回路を省スペース化するためにパワーインダクターの小型化技術も進展している。フェライト系から大電流対応で有利なメタル系の新製品開発が巻線、薄膜、積層の加工工法で活発化している。

 水晶デバイスも、5Gスマホ向けに、パッケージの小型、薄型化が進展。温度センサー内蔵水晶振動子では、1210サイズへと小型、薄型化が進んでいる。

 5G基地局は、小型基地局(スモールセル)を近距離間で数多く設置する。このため、基地局用部品も小型であることが必須。加えて、実装密度が高まるために耐熱性に優れ、耐湿など耐環境性も同時に求められる。

 このため、コンデンサーでは、小型・大容量のMLCCやアルミ電解コンデンサーなどの開発が進み、低ESRを特徴とする導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーや、高い耐熱性能を備えた導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーなどの新製品開発も活発化している。

接続部品
Sub6対応コネクター開発進む

ミリ波同軸コネクター

 接続部品では、5Gインフラ向けの高速伝送用コネクターや高速光コネクションなどの開発が活発化しているほか、5Gスマホでの搭載アンテナ数増加に向けたSub6対応コネクターなどの開発が進んでいる。

 通信インフラ関連では、5Gシステム向けに、56ギガ/28ギガbpsなどの超高速伝送に対応したハイスピード対応コネクターなどの開発が活発。

 5G基地局向けコネクターでは、防水小型光インターフェースコネクターや、45ギガヘルツ対応高周波同軸コネクター、5G基地局で求められる放熱性向上に寄与する防水・FAN用フローティングタイプコネクターなどの開発および製品バラエティー拡充などが進んでいる。

 5Gスマホ向けコネクターでは、12ギガヘルツ対応の優れた高周波特性を維持しつつ、超小型化を図った基板対基板コネクターなどが開発されている。ハイエンドの5Gスマホで求められる高密度化による内蔵用コネクターへのさらなる小型化要求に対応し、0.3ミリピッチ基板対基板コネクターなどの狭ピッチ基板対基板コネクターの開発や製品ラインアップ拡充も進んでいる。

 同時に、5Gスマホ内蔵コネクター技術の高度化に対応するため、低誘電率や低誘電正接、高耐熱性などの特性を付与した素材開発も進展している。