2021.09.08 半導体の3割はニセモノ?真贋判定サービスに注文殺到

顕微鏡をのぞき込む担当者ら

 世界的に半導体の需給が逼迫(ひっぱく)する中、「偽物」とみられる半導体が問題になっている。廃棄された家電品から半導体を抜き取って新品を装ったり、メーカーの名前を偽ったりしているとみられる。電子部品解析などの企業が調べたところ、約3割が「偽物」。こうした半導体は、製品全体の質を悪くしたり、トラブルにつながったりする恐れも。この企業が始めた真贋(しんがん)判定サービスは想定以上の忙しさ。担当者は「本来はニーズがあまりない方が望ましい問題だが、メーカーや利用者の安全のためにも必要で……」と複雑な表情だ。

 半導体の模倣品問題は以前からある。加えて、CASEと呼ばれる自動車の電動化などの流れや、コロナ禍の中でのリモートワーク増加に伴うパソコン(PC)需要、ゲーム機などの巣ごもり需要、データセンターや第5世代移動通信規格5G関連の需要、米中摩擦や一部工場の火災の影響などで、世界的に半導体不足が問題になり、改めて注目されている。

 背景には、半導体を使って製品を組み立てるメーカーの中に、従来の調達先であるメーカーや代理店から新品を買う代わりに、ネット販売や商社などから「流通在庫」と呼ばれる品を買う動きが広がっている事情がある。これは、製造中止になった品や、正式ルート以外の品の可能性が高くなる。

 そんな中、OKIの子会社、OKIエンジニアリング(東京都練馬区)には昨秋ごろから、「入手した半導体の品質を確認してほしい」といった声が多く届くようになった。

 そこで同社は今年6月から、半導体の真贋判定サービスを始めた。すると100社以上から引き合いが舞い込み、1社からのロットは数百~数千単位に及ぶようになった。

X検査の結果を画面に表示し、模倣品と思われる半導体と正規品の配線を比べる担当者

 検査の現場では、顕微鏡を使って、半導体の企業マークやシリアル番号などを確認。電気特性も調べる。また、レントゲン検査のように、X線検査装置を使って内部の配線パターンも確かめ、正規品と比較する。

 表面を加工してロゴマークなどを模倣した痕跡や、電気特性の違い、配線パターンの違いなどがあれば、模倣品の可能性が高い。

半導体の表面などを一つ一つ丁寧に顕微鏡で調べる担当者

 以前生産されていた旧型や、廃棄家電などから取り出した中古品、本来は廃棄されるべき不良品、本物そっくりのコピーといった粗悪品、横流し品などがあるもよう。模倣品では、製品に記されるメーカー名を、名の通った大手の社名に上書きしているような例も多いようだ。

 多くの場合、大本はネット上で販売されているとみられる。商社が調達し、急いで納品したような例が目立つという。ただ、こうしたサイトもすぐに閉鎖される例が少なくなく、流通をたどっていくことは難しい。

 性能がきちんとしていればまだいいが、故障したり、最悪の場合、発煙したりする恐れもあるとされる。例えば、身に着けるウエアラブル端末や医療関係の機器、電子たばこなどに使われると、健康被害にもつながりかねない。

 半導体の模倣品を巡っては、業界団体などもかねて対策に動いている。模倣品による米国系半導体メーカーの損失は、年間75億ドルに上るとの試算もある。

 半導体を組み込んだ後に不具合が分かると、製造ラインが止まってしまいかねない。それだけにメーカーには、半導体の真贋を早く知りたいというニーズが強い。

 同社の高森圭事業部長は「もう少しして半導体不足が落ち着くといいのですが」と話している。

 バッグなどのブランド品の模倣も立派な知的財産権侵害だが、電子部品の模倣は安全にも関わるだけに、やめてほしいものだ。