2021.10.29 【次世代自動車用部品特集】技術進化をチャンス電子部品各社、高成長めざす

 電子部品メーカー各社は、次世代の自動車開発に向けたR&Dや技術提案を活発化させている。現在の自動車市場は、「CASA」「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」などをメガトレンドとした大きな市場変革・技術変革が起きている。特に世界的なカーボンニュートラル要求から、車の電動化の動きが一段と加速し、また、自動運転車の開発競争も一層激しさを増している。電子部品各社は、これらの車の技術進化をチャンスととらえ、将来ニーズを先取りした先行開発を進めることで、車載用電子部品ビジネスでの高い成長を目指す。

 自動車市場は電子部品産業の中長期の成長をけん引する最重要分野の一つ。車の世界生産台数は、乗用車と商用車(トラック、バス)を合わせ、2010年代後半には年間9000万台超まで拡大した。

 20年は、新型コロナウイルス感染症拡大が年明け後の自動車マーケットに大きな影響を与え、20年春ごろの段階では、20年の世界の自動車販売台数は7000万台程度まで落ち込むことが想定された。しかしながら、20年5月ごろから世界最大の自動車市場である中国市場がいち早く回復。米国市場も7月ごろから回復に転じ、20年秋以降も当初の予測を上回るペースで世界の自動車市場の回復が進んだ。その結果、20年の世界の自動車販売台数は7600万台から7800万台程度の水準に達したとみられる。

 世界の自動車の生産販売台数は、21年の年明け以降も好調さが継続し、電子部品メーカーの車載用電子部品の受注は、今春以降も活況さが続いている。足元では、世界的な半導体不足が深刻さを増し、特に今夏以降は、主要自動車メーカーで減産や生産の遅れなどの発表が相次いでいるが、完成車メーカーなどによるBCP在庫積み増しの動きもあり、車載用電子部品の需要は高水準が継続している。

 世界の新車販売台数が18年ごろの水準に完全に戻るには数年かかるとも指摘されているが、コロナ収束と、部材ひっ迫の解消に合わせ、22年以降も回復傾向の継続が予想されている。

 「CASE(コネクテッド、オートノマス、シェアード&サービス、エレクトリック)」は、今後のモビリティー革命をけん引するメガトレンド。これらにより、カーエレクトロニクス技術は大きく進化・発展し、中長期で市場を大きく押し上げることが予測されている。

EVシフト加速

 特に「電動化」は、自動車市場変革における最大のキーワード。最近の世界市場では、欧州や中国など各国政府によるCO₂(二酸化炭素)排出規制強化や、将来のカーボンニュートラル化などが相次いで打ち出され、これに合わせ、20年後半以降、車のEVシフトの動きが加速している。

 中でも欧州では、気候変動対策の重要性の高まりを背景に、20年前後から多くの国や都市で車の電動化シフトを前倒しさせる目標設定がなされ、国によっては30年代にガソリン車やディーゼル車の国内販売を禁止するなどの方針が打ち出されている。

 世界最大のEV市場である中国も、35年には国内で販売する新車販売の全てを、NEV(新エネルギー車=EV、FCVなど)とHEVに切り替える方針を発表した。ガソリン車規制の動きが緩やかだった米国も、バイデン政権誕生により、電動化シフトの加速が予想されている。

 自動車メーカー各社でも、20年以降、自社が生産・販売する車両全体に占める電動車比率を引き上げる中期計画の策定・発表などが相次いでいる。こうした動きに呼応し、電子部品各社でも電動車市場戦略強化が打ち出されている。

 「オートノマス」では、自動運転車/完全自動運転車の実現に向けた技術開発が国内外で活発化している。電子部品各社はこれらに対応するため、高性能センサーや通信デバイス、車載高速伝送用部品などの開発を加速させている。

 「コネクテッド」では、高速伝送対応や通信品質の向上に向けた電子部品・モジュールの開発が活発。

 「シェアード&サービス」でも、電子部品企業のMaaS関連市場に向けた新たなビジネスモデル構築などの動きが見られる。

 車載用電子部品市場は、今後も車の高機能化や電動化を背景に、車の生産台数の伸びを上回る成長が見込まれる。特にADAS/自動運転のキーデバイスであるセンサーや通信系デバイス、電動車向けパワーデバイス/モーターなどは高成長が見込まれる。さらに、今後は車載5G(第5世代移動通信規格)関連市場も本格的に立ち上がる見通し。

 電子部品各社の、自動車業界の地産地消要求の強まりに対応した生産・供給体制や営業・技術サポート体制の強化も進む。各社は、日米欧などの主要自動車メーカーやティア1に対し、顧客の近場での供給や技術サポートのための体制構築を進めることで、顧客満足度向上や事業のスピードアップを目指す。急成長が進む中国系EV企業や中国系EVバスなどへのアプローチも重視されている。同時に、米中摩擦長期化や新型コロナ関連でのリスクも踏まえたサプライチェーン再構築や、生産拠点のグローバルでの複線化なども重視される。

 一方、直近では素材価格高騰や物流費高止まり、原油高などが車載用電子部品メーカーの事業展開にも影響を与えつつある。中国での石炭不足が自動車産業の生産に与える影響も懸念されている。

 各社は、需要増に合わせた積極的な増産投資を進めるとともに、生産効率向上や設備の最適化などによる収益性確保に注力。同時に、半導体不足が自動車市場に与える影響などを注意深く見ていることで、今後も安定的なビジネスの推進を目指す。