2021.12.03 【年末LED照明特集】IoT対応品が拡大高付加価値の空間提案に軸足
付加価値の高い照明の提案が進む
年末は照明の需要期だ。冬のボーナス支給と合わせ、家電量販店をはじめとする小売りでは、大型品購入の「ついで買い」を見越した提案に力が入る。同時に、IoT対応したLED照明が市場に登場し、スマートフォンやタブレットから操作できるようになってきた。非住宅分野でもIoTを生かしたサービスが提供されており、照明各社は付加価値を高めた空間提案に軸足を移しつつある。
国内の照明市場は、新型コロナ禍で落ち込んだ昨年に対し、復調傾向にある。コロナ前の状態に戻るまでには至っていないものの、住宅、非住宅ともに需要は堅調。中でも目立つのが、付加価値の高い照明が増えていることだ。
日本照明工業会(JLMA)は、IoTに対応していたり、快適なあかりを実現したりする照明を「CSL&HCL」と定義し、出荷台数に占める割合の公表を4月から開始した。CSLはコネクテッド・スマート・ライティング、HCLはヒューマン・セントリック・ライティングの略だ。
ここ数年で、IoTに対応してネットワークにつながる照明をはじめ、スピーカーを搭載して音楽が流れる照明、停電を検知して自動点灯する照明など、単なる「あかり」の枠を超えた製品が続々と登場している。CSL&HCLはこうした照明を対象にしており、今年度上期(4~9月)の構成比は17.7%を占めた。
CSL&HCLが最も広がっているのは住宅分野だ。上期は20.4%という構成で、9月単月では23.8%まで高まった。実際、住宅分野ではWi-Fiやブルートゥースを使ってLED照明をつなぎ、スマホやスマートスピーカーから操作できるようにする提案が進む。
さまざまな機器がつながるIoT時代となり、他の機器でもIoT化が当たり前となったことから、ユーザーにとっても心理的な導入・利用の敷居が低くなったといえよう。
また、調光調色によるあかりの質の追求も進んでいる。勉強や就寝時などシーンごとに最適なあかりを実現する調光調色は、多くのLED照明に搭載されるようになった。リモコンから簡単に操作できるほか、IoT対応品であればスマホを使って直感的に色味を変更できる。照明は普段から利用頻度が高いため、市場でも調光調色タイプは人気だ。
非住宅分野では、サービスや効率化などにつながる照明のIoT提案が活発になっている。東芝ライテックが提供を開始した「人流分析サービス」は、まさにこれだ。
東芝ライテックは、カメラとLED照明を一体化した「ビューレッド」を販売してきた。ベース照明と高天井照明をラインアップしており、それらを生かして、指定エリアに人が侵入するとアラートを発する「安全アラートサービス」を昨年から提供。
先月末には第2弾として人流分析サービスを始めた。カメラを別途取り付ける手間が省ける上、定点観測で正常時と異常時の違いなどを検出しやすくする。人工知能(AI)による画像分析も行い、体育館における団体スポーツのフォーメーションといった行動解析に役立てることも想定する。
照明は、屋内外のあらゆる場所に設置されている。特に高所にあるのが利点で、センサーのように使えば、照らしながら多くの情報を取得できる。照明の効果的な活用法についてはまだ試行錯誤の段階といえるが、システムやサービスとして徐々に具体化してきた。今後は他機器と連携しながら、空間としての快適さの追求なども進むはずだ。
除菌用途にも活用
除菌としてのあかりもコロナで一気に注目が集まった。以前から除菌用途で使われてきた紫外線が、空気除菌機という形で家庭からホテル、病院、商業施設まで、さまざまなシーンで活躍するようになった。照明各社も商機をつかもうと、紫外線ランプや、除菌効果の高い深紫外線LEDを搭載した機器を開発し、販売に力を注ぐところもある。
こうした除菌用途は昨年、急激に需要が増えたものの、コロナが落ち着いてきたことに加え、主要な場所への導入が進んだこともあり、一服感が出ているのも事実。ただ、コロナがもたらしたニューノーマル(新しい日常)では空気除菌機の設置や導入は必須と見る傾向が強い。換気設備と同じように、建物でも設計段階から導入が検討されるようになると、大きな需要にもつながり得る。空気清浄機への関心がいまだ衰えないことを考えても、手堅い需要が見込めそうだ。
LEDの普及で出荷台数が踊り場に来ている照明市場。これからはJLMAが掲げるCSL&HCLに即したあかりがさらに存在感を増すだろう。
深紫外線のような除菌用途もこの定義に含まれる。メーカーにとっても単価アップにつながる製品であるため、住宅、非住宅の両分野で導入が進めば、新しい照明としての価値が見直される契機になる可能性もある。