2021.12.08 【ルームエアコン特集】寒冷地仕様の機種も充実換気、清潔機能で安心・快適空間
暖房シーズンが到来し、年末にかけてエアコンも商戦が盛り上がってきた。メーカー各社から新型機も発売され始め、コロナ禍を意識した機能が搭載されるようにもなっている。北海道や東北といった寒冷地では普及の余地が多く残されている上、標準地では暖房の主力として使われるようになっている。家電量販店でも展示スペースを広く取り、来店客のニーズに合ったモデルを選びやすいようにしている。
エディオンが3日、オープンした「エディオン日吉店」(横浜市港北区)。3階の白物家電を中心としたフロアの一角には、壁際にずらりとエアコンを展示。その前に設置された商談テーブルでは、オープン直後の午前中から多くの来店客が商談を行っていた。
量販店にとってエアコンはこの時期、目玉商品の一つ。ボーナス支給と合わせ、年末はエアコンの需要期に当たるからだ。子どもへのクリスマスプレゼントを購入するために、ファミリー層をはじめ、さまざまな客層の来店頻度が増える時期でもあり、店にとって商機が高まる。
昨年度は1000万台超という過去最高の出荷台数を記録したエアコンだが、今年度は6月から10月まで5カ月連続で出荷台数が前年割れしている。昨年度はコロナ禍でおうち時間が増え、エアコンの利用頻度が高まった。それが買い替え需要を押し上げた上、テレワークへの対応でエアコンの新設も増加。暖房能力を高めた寒冷地仕様の機種もラインアップが増えたことで、エアコン需要は全般的に好調に推移した。今年度は逆に、需要の反動減が出ている格好だ。
ただ、新しい生活様式が定着するにつれ、家庭内でエアコンが存在感をさらに増すようになっている。感染症予防策として注目が集まる換気についても、ダイキン工業だけでなく、パナソニックが今年度モデルで対応してくるなど、コロナ禍を意識した機能強化が進んでいる。他社も、ハード的な換気機能を備えていなくとも、換気タイミングをアナウンスするようなソフト機能を実装するなど、対応を強めている。
同時に、パナソニックの「ナノイー」のように、ウイルスや菌などさまざまな有害物質を抑制する機能を、これまで以上に訴求するようになっている。室内の快適性や安心の提供にも直結してくる機能だけに、販売現場でも提案しやすくなっている。
例えば、富士通ゼネラルが11月に発売した寒冷地向けエアコン「ゴク暖 ノクリア」ZNシリーズには、熱交換器を55度以上に加熱することでカビ菌、細菌を除去する独自の「熱交換器加熱除菌」を搭載。さらに電気集じん方式の空気清浄機能である「プラズマ空清」や、特殊コーティングでフィルターに付着したウイルス、菌を抑制する「ウイルカット・フィルター」といった清潔機能を備えている。寒冷地向けとはいえ、高まる清潔志向に応えた形だ。
また、本格利用を目前に控え、快適にエアコン暖房する方法の提案も進んでいる。
ダイキンは、同社のYouTube公式チャンネルで「上手なエアコン暖房の方法」という動画を公開。世帯普及率が9割を超え、暖房器具の中心として利用されているエアコンは、暖房することで室内が乾燥しやすいといったデメリットがある。ダイキンが公開した動画は、エアコン暖房によって部屋が乾燥する空気のメカニズムや乾燥対策を紹介する内容だ。
冬場のエアコン暖房について、首都圏在住の女性200人を対象にダイキンが調査(2018年12月)を行ったところ、「困っている/気になる」ことは、「室内の空気が乾燥する」で約6割を占めた。自身で行っている乾燥対策も聞いたところ、半数以上になる6割近い回答者が「満足していない」と答えた。こうしたことから、エアコンで暖房しながら快適に過ごすための参考動画を作成した。
冬場の室内温度は18度以上が目安とされており、湿度は40%を下回るとウイルスが活発化し、60%を超えるとカビやダニが繁殖しやすくなるといわれている。そのため、エアコンと加湿空気清浄機をつけっぱなしにして温度と湿度が下がらないようにするのが重要という。こうした快適性と健康を保つヒントを紹介し、正しい利用を促している。
エアコンは、寒冷地や世帯当たりの設置台数の増加などで、基礎となる買い替え需要の底上げが進んできた。今後も年間900万台以上の高い水準が続くとみられる上、付加価値も高まり、単価アップも進んでいる。国内の家電市場では数少ない需要が拡大傾向にある製品で、参入メーカーも多いが、IoT化も進んでますます重要度が増している。ハードだけでないソフト提案をはじめ、今後は他機器やサービスとの連携もさらに重視されるようになってくるはずだ。