2021.12.21 IGESなどシンポ開催、市場メカニズムの合意、日本が貢献COP26、交渉団の4省庁勢ぞろい

COP26の交渉風景写真などを掲示しながら4省庁の担当幹部らが質疑に応じた

 気候変動問題などの政策研究を行う地球環境戦略研究機関(IGES、神奈川県葉山町)が主催する「COP26報告シンポジウム」が15日、オンラインで開かれた。国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に政府交渉団として参加した4省庁が一堂に会する珍しい報告会だ。外務省、経産省、環境省、林野庁の担当幹部らが、温室効果ガスの削減量を国際的に取引する「市場メカニズム」の合意に日本が大きく貢献した成果などを報告した。

 地球産業文化研究所(東京都中央区)との共催。IGESは、1997年に開かれた地球温暖化防止京都会議(COP3)を契機に、当時の環境庁が主導し、神奈川県の協力も得て98年3月に発足した。アジア太平洋地域の持続可能性などの分野で約150人の研究員らが政策の提言などを行っている。

 毎年、先進国と途上国で代わる代わる開催されるCOPは、IGESにとって「重要なテーマの一つ」(IGES戦略マネージメント・オフィス)だ。毎回、研究員を派遣しているほか、環境省の交渉団の現地サポートを担うこともあったという。

 とりわけ、COP26で日本にとって最大のテーマと目されていたのが、排出クレジットの国際的な取引ルールの完成だ。気候変動の国際的枠組み、パリ協定の6条で市場メカニズムとして規定されたものの合意には至らず、積み残しになっていた。

 環境省の水谷好洋国際地球温暖化対策担当参事官は「COP24、25ではルールがなかなか決まらず、宿題になっていた」と振り返った。多国間での取引のほか、二国間で行う場合もあり、日本は既に13年から独自に先進的な取り組みとして「二国間クレジット制度」を導入した経緯がある。先進国と途上国で協定を結び、途上国に技術提供などの支援をして削減できた量を、先進国側の削減分として計上できる仕組みだ。

 国同士だけにとどまらず、航空分野や民間企業の自発的な市場でも準用され、世界の排出削減を効率的に進める手法として重要視されている。

 水谷参事官は、6条の活用で二酸化炭素(CO2)削減が効率化し、30年までに世界全体で年間最大約90億㌧を追加的に削減できるとの試算に言及し、「大きな削減ポテンシャルがあり、パリ協定の目標達成には重要になる」と語った。

 日本は、二国間クレジット制度を推進してきた経験などを生かし「交渉を主導した」(水谷参事官)。主な論点だった「二重計上防止策」では、プロジェクトを実施した国が承認したクレジットだけを削減分として利用できるとする、日本政府案が採用された。13年以降に登録したプロジェクトのクレジットが対象になることなども決まり、ルールは大筋合意に至った。

 水谷参事官は「非常に地道に精力的に各国と議論して信頼を得てきた」結果だったと振り返った。また、外務省の大高準一郎気候変動課長も交渉を高く評価。「日本側が提案してきたが、今回は全体をまとめあげようという機運が関係国に広まった」と背景を指摘した。

 さらに、水谷参事官は、二国間クレジット制度などを活用して海外での脱炭素移行を推進していくことを強調。「国内外での取り組みを通じ、脱炭素ビジネスの新たな機会が生まれていく中で、日本企業やさまざまな関係者が(機会を)つかんでいけるよう各省庁と支援したい」と述べた。