2019.12.06 【SMD/基板内蔵部品特集】5G本格運用で小型化、品種拡充が進展
車載分野で需要が伸びる導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ
SMD(チップ部品)の小型化、品種拡充が進展している。次世代高速通信規格5Gの本格運用に伴い、スマートフォン、モジュール、さらにはIoTに関連した超小型、薄型チップの要求が一段と強まっている。
また、需要が伸びている自動車や産業機器向けの高信頼性チップの場合も形状がバラエティ化。SMDは、成長分野における技術トレンドに沿って進化を続ける。
ダウンサイジング・テクノロジー
0603サイズの比率が今後上昇
積層セラミックコンデンサ(MLCC)をはじめインダクタ、抵抗器などの主要チップ部品は小型化シフトし、現在では1005サイズの比率が最も高い。
しかし、スマホをはじめウエアラブル端末、さらには各種モジュールなどにおける部品の実装密度が一段と高まっていることから、0603および0402の両サイズが急速に市場を拡大。JEITA(電子情報技術産業協会)の資料によると18年ごろを境に、1005サイズに代わって0603サイズの比率が最も高くなるとしている。
モジュールも小型化技術として部品内蔵技術の採用が広がりつつある。
部品内蔵基板は、多層板の内層にICや抵抗器、コンデンサなどの部品を埋め込み、基板表面にも部品を実装することで、基板面積を小型化するもの。
基板内蔵用部品に求められるのは、薄型化である。MLCCは厚み0.14ミリから0.11ミリメートル、さらに0.09ミリメートルへとさらに薄型化を実現。チップ抵抗器については、厚み0.14ミリおよび0.13ミリメートルの薄型品を開発。
チップコンデンサの動向
大容量、高耐電圧化の開発活発化
チップコンデンサは、スマホ、自動車、産業機器の3大需要分野に向けて新製品開発が活発化している。
MLCCは、スマホ向けなどでは0402サイズと0603サイズといった超小型品を対象に大容量化、高耐電圧化といった新製品の開発が活発化。次世代チップとしては、0201サイズの生産が始まった。部品内蔵基板を使用したモジュールでは、内蔵用MLCCとして、0.09ミリメートル厚の超薄型品が登場した。
車載向けMLCCは、ECU用として高信頼性タイプの品ぞろえが充実する。外部電極に板状の金属フレームを取り付け、外部から様々な応力を緩和した金属端子付きタイプが開発されている。また、外部電極に導通性のある樹脂電極層を挟み込んだ樹脂電極品も外部からの応力緩和に効果を発揮するとして用いられている。
タンタルコンデンサは、大容量化の方向性としてタンタル粉末の微粉化技術の進展による高CVタンタル粉末の開発とその使いこなしがなされてきた。また、チップの構造としては、下面電極構造が開発された。下面電極構造を採用し、タンタルの体積効率を高めて小型・大容量を実現した例では、2×1.2×1ミリメートルサイズで47μFを達成。
アルミ電解コンデンサは、振動加速度が最大10Gだったのに対して、40Gへの対応が可能で、しかも150度対応の高温信頼性を高めた製品などが車載用として販売されている。
電解質に導電性高分子(ポリマー)を使ったポリマーコンデンサ、電解質に導電性高分子と電解液を採用した導電性高分子アルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)の開発が活発化している。いずれも自動車のECU用電源での採用が急速に進んでいる。
チップインダクタの動向
スマホ向けメタル系の搭載比率高まる
チップインダクタは、電源回路、ノイズ対策、高周波回路といった主要な用途に適した新製品開発が展開されている。
電源用(パワー)インダクタは、ニッケル(Ni)-亜鉛(Zn)系フェライトコアに銅線を巻回したフェライト系巻線パワーインダクタが多い。このほか、積層、薄膜、さらにはメタル系の巻線、積層、薄膜タイプなどがある。
スマホ向けでは、大電流対応が可能なことから、メタル系の搭載化率が高まってきた。1608サイズに小型化し、さらに1005サイズも実現している。メタル系は、150度の高温度対応を実現し、車載にも参入。
フェライト系の巻線型インダクタは、形状が多彩化。その中で、車載向けとしては3ミリ角-15ミリメートル角サイズで150度対応を実現している。
信号系インダクタは一般的にコンデンサと組み合わせてフィルタ用として使用される。小型、高Q値、高インダクタンス精度、高自己共振周波数、高許容電流が求められる。NFCではノイズ対策としてLCフィルタが使用されている。
フィルタ用インダクタは、巻線型、積層型、さらには薄膜型があり、積層型では0402サイズまで小型化。新たに次世代チップとして0201サイズが開発された。
高周波インダクタは、高周波回路の共振回路、インピーダンスマッチング、チョークとしての用途に対応する。種類としては、Q値や許容電流の要求には巻線型が強い。L値範囲の広範囲化、小型化には積層型が、L値精度の高精度化、小型化には薄膜型が適している。
チップ抵抗器の動向
0201サイズまで極小化実現
チップ抵抗器は、スマホ向けの小型品、車載用高信頼性タイプ、産業機器向け高性能品など、用途に最適な新製品開発が展開されている。
MLCCなどと同様に0402サイズの用途が拡大している。さらに次世代実装に対応して、0201サイズまで極小化を実現しており、市場での評価を見極めながら量産、供給が始まる。薄型化では、厚み0.13ミリおよび0.14ミリメートルを実現。電源回路では、高電力チップ抵抗器として長辺電極構造を採用する傾向が強まっている。温度変化が激しく、振動・衝撃がある車載の各種ECUなどとして適している。
電流検出はじめ、カレントリミット、モーターの回転制御などに使用する低抵抗チップ抵抗器の品ぞろえを充実させている。特に金属板タイプでラインアップの拡充が目立つ。雷サージ対策を必要とする回路には、耐サージチップ抵抗器がある。また、電源周辺部の回路では硫化に強く硫化発生による抵抗値断線を防ぐために耐硫化チップ抵抗器が使用される。
【SMD/基板内蔵部品特集】
●5G本格運用で小型化、品種拡充が進展
●ニチコン 自動車関連機器分野でチップ形アルミ電解コン強化
●KOA 銅めっき接続に対応、基板内蔵用厚膜チップ抵抗器XR73シリーズ品揃え
●スミダコーポレーション コイル類のSMD化推進へ モバイルなど成長戦略を展開
●北陸電気工業 各種チップ抵抗器など自動車分野拡大に取り組む
●旭工芸 最適なキャリアテープ供給 超小型チップ用8ミリ幅品が拡大