2022.01.28 【水晶デバイス特集】次世代ニーズを先取り5Gや自動運転などで需要増大

 水晶デバイスメーカー各社は、中長期の成長に向けた戦略を強化している。第5世代移動通信規格5Gの本格化や、ADAS/自動運転技術の高度化、IoT関連市場の拡大などが進む中で、水晶デバイスは今後もグローバルで需要の増大が見込まれている。各社は、次世代ニーズを先取りしたR&Dの推進やグローバルでの営業・マーケティング活動を強化することで、今後も水晶デバイスビジネスの高成長を目指す。

 水晶デバイスは、あらゆる電子機器やモジュール製品に搭載され、機器の正確な動作をサポートする基幹部品として重要な鍵を握っている。

 水晶デバイスの需要はここ数年、自動車とスマートフォンの生産台数増加と、機器の高性能化に伴う搭載点数増加などにより、拡大傾向が続いている。薄型テレビやデジタルカメラなどの民生機器向けの需要が伸び悩む中で、日系水晶デバイスメーカー各社は、通信や自動車を中心とする高付加価値分野に照準を合わせることで、持続的な成長を目指している。

 水晶デバイス業界では、2010年代の半ば以降は、グローバル市場での過当競争などから水晶デバイスの価格下落が進み、各社の収益性が低下。さらにスマホ市場の飽和や、18年後半以降の米中貿易摩擦の激化に伴う世界経済停滞や設備投資需要減速も水晶デバイス需要に影響を与え、水晶デバイス業界での過剰な設備投資による在庫増の影響も相まって、18年後半から19年にかけて厳しい状況が続いた。このため、水晶デバイスメーカー各社のグローバル生産体制見直しなどの構造改革も進展した。

 20年の水晶デバイス市場は、年初からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、年前半は低調に推移した。しかし、20年度の水晶デバイス需要は1Q(20年4~6月)を底に、2Q以降は需要が反転。分野別では、5Gスマホや5G基地局需要の増大、20年夏場以降の自動車生産回復が水晶デバイス市場を押し上げた。加えて、巣ごもり需要によるパソコン(PC)やタブレット、ワイヤレスヘッドホン需要増大なども水晶デバイスの成長を後押しした。

 同時に、20年後半以降の水晶デバイス市場は、急激な需要回復に伴う需給バランスの良化もあり、製品単価も上昇傾向となり、それまでの極端な価格下落傾向から反転し始めている。

 21年の水晶デバイス市場も20年後半の勢いが継続し、年間を通じて好調に需要が拡大した。特に、世界的な5Gの普及本格化に伴う5Gスマホや5G用小型基地局の増大、自動車の高機能化進展、光通信を含むインフラ需要増大、IoT関連市場の広がりなどが、水晶デバイスの高付加価値製品の需要をけん引した。加えて、半導体不足やサプライチェーンの混乱に伴う電子部品ユーザーの部品在庫積み増しの動きも、水晶デバイス各社の需要増をけん引した。

 22年の水晶デバイス需要も当面は堅調な推移が予想されている。スマホ向けは5G/ミリ波の進展が小型・高品質の水晶デバイス需要を押し上げることが期待される。同時に、ADAS/自動運転をはじめとする自動車の電子化・高機能化の進展は今後も自動車1台当たりの水晶振動子や水晶発振器の搭載点数を増大させ、中長期的に需要を押し上げていくことが期待されている。

 近年は、ADAS搭載車が従来の高級車から中・小型車にも広がりつつあり、車載カメラのハイエンド化と搭載点数増加、ミリ波レーダーやLiDAR(ライダー)搭載車種拡大などが高品質で高性能な水晶デバイスの需要を押し上げていく。

 加えて、5Gの本格化は、スマートファクトリーやスマートシティー、メディカル/ヘルスケアなどの市場にも波及効果を与え、5Gを応用した新たなサービスやソリューションの創出につながることが予想されている。20年代後半には、自動車での5Gサービス適用も本格化していく見通し。

 さらに、今後はネクスト5Gや6G(第6世代移動通信規格)に照準を合わせた技術開発も徐々に進展していくことが見込まれる。

 これらにより、今後も高性能な水晶デバイスの新たな需要創出が進んでいくことが期待されている。