2022.03.08 政府、原油価格高騰で緊急対策ウクライナ侵攻でIEAと協調、750万バレル放出
オンラインで行われた臨時閣僚会合(提供=経産省)
ガソリン高補助、上限5倍に
ロシアのウクライナ侵攻で原油価格がさらに高騰する懸念があるとして、政府は4日、緊急対策をまとめ公表した。国際エネルギー機関(IEA、パリ)の会合で合意した石油計6000万バレルの協調放出では、日本は米国に次ぐ750万バレルの備蓄を放出して流通させる方針だ。また、元売りへの価格抑制補助は上限を5円から25円に大幅拡充する対策などを柱として盛り込んだ。
同日、関係閣僚会合を終えて会見した萩生田光一経済産業相は、情勢悪化などを踏まえ、「政府として、ロシアを巡る企業活動の状況について情報収集を進めるとともに、産業界ともしっかり連携しながら企業活動への影響をできる限り抑えられるよう全力で取り組んでいく」と力を込めた。
萩生田大臣はロシアの軍事侵攻を受けて、急きょ1日に開催が決まったIEAの臨時閣僚会合にオンラインで参加した。IEAは、石油などのエネルギー安定供給のために設立された国際機関で、OECD(経済協力開発機構)加盟国が参加できる。
会合では、エネルギー安全保障などの観点から、供給不安への対応策などが検討され、IEA加盟全30カ国が石油備蓄計6000万バレルを協調放出することで合意した。「市場安定化のためにメッセージの発信ができ、大きな意義があった」(資源エネルギー庁国際課)。
米国が、全体のうち半分に当たる3000万バレルの放出を表明し、他の加盟国が残り半分を分担することになった。「率先して安定化に向けて貢献していく米国側の意向の表れ」(同課)とみられる。
加盟国間で調整している最中だが、日本の分担量は米国に次いで2番目に多い750万バレルで固まった。「単純計算で国内消費量の4日分程度」(エネ庁石油精製備蓄課)に相当する。
IEA加盟国による協調放出は、産油国リビアの内戦が悪化するなどして供給不安が生じた2011年6月以来。原油高騰を巡っては、昨年11月に米国などの意向に沿って、日本は国家備蓄を放出する異例の対応を取っていた。
また、焦点となっていた国内ガソリンの値上がりへの対策も盛り込まれた。エネ庁が2日に発表したレギュラーガソリンの全国平均価格は前週比0.8円高の172.8円(2月28日調査)。石油情報センターによると、1月上旬から8週連続での値上がりとなった。同センターでは、次回調査でもさらに0.5円以上の値上がりを予測している。
緊急対策では、これまで補助上限としていた1リットル当たり5円の支給を、25円に引き上げる。「当面の間の緊急避難的措置」(萩生田大臣)とし、一般会計予算の予備費から3500億円を準備した。
そもそもガソリン価格高騰時には、ガソリン税の上乗せ税率分(1リットル当たり25.1円)を減税する「トリガー条項」という仕組みがあった。現在は凍結されたままだが、今回、支給上限を5倍に当たる25円に大幅拡充したのは、「トリガー条項並みの支援」(エネ庁石油流通課)を求める声が与党自民党などで強かったためだ。
最速で10日以降の支給から適応され、「3月中は172円程度を目標として価格上昇を抑制していく」(同課)ことになるという。こうした枠組みは3月末までの時限措置を予定すが、石油流通課では、4月以降の対応については「ウクライナ侵攻の状況を見極めていく必要がある」としている。