2022.04.05 東急電鉄 全路線の電車運行を再エネで国内初、4月から

東急電鉄の路線を走る最新車両。環境性能を高めている

LED照明に替えた蒲田駅のホームLED照明に替えた蒲田駅のホーム

輸送、年のべ8億人超

 事業持ち株会社、東急を中心としたグループは3月28日、東急電鉄の全路線の電車を100%再生可能エネルギー由来の電力に切り替えて運行すると発表した。東京と神奈川の2都県を走る8路線で、輸送人員は年間で延べ約8億人を超える。4月1日から実施しており、全路線での切り替えは国内の鉄道会社としては初めてという。

 同グループが公表した「環境ビジョン2030」では、2030年にはグループ全体で使用する電力の50%を再エネで賄い、二酸化炭素(CO₂)排出量を19年比で46.2%削減する目標を掲げた。さらに、50年には再エネ100%とし、CO₂排出も実質ゼロを目指す。

 グループの年間のCO₂排出量は約55万1060トンに上り、約3割を中核の鉄道事業が占める。目標達成のためには同事業での削減が不可欠だ。今回の切り替えにより、鉄道事業分の3割のうち、車両工場などでの使用分を除く「大部分を削減できる」(東急)見込みで、グループとして大きな一歩を踏み出すことになる。

 東急によると、メインの本線から枝分かれした支線を再エネ100%の電力で運行している鉄道会社はあるが、全路線での切り替えは全国で初めてという。

 東急電鉄では、軌道電車の世田谷線を19年3月から再エネ100%の電力で運行している。約5キロメートルに10駅が並ぶ短い路線で、使用電力は年間200万kWhほどだ。

 この取り組みを、渋谷と横浜を結ぶ主力の東横線や田園都市線、大井町線など鉄道全7路線にも拡大した。世田谷線を含む8路線の長さは約105キロメートルとなり、20年度実績で年間延べ約8億578万人を輸送している。

 鉄道7路線には87駅あり、駅で使用される照明や改札機、券売機などの電力も切り替えた。使用電力は、電車の運行を中心に年間約3億5000万kWh(22年度計画)に達する。

 世田谷線はグループの新電力、東急パワーサプライから電力供給を受けている。一方、新たに導入した7路線には、東京電力エナジーパートナーから供給される。太陽光発電など発電所を特定できるトラッキング付き非化石証書などを活用し、実質的にCO₂排出量ゼロを実現する。年間で約16万5000トンのCO₂を削減できる見込みで、一般家庭の約5万6000世帯に相当するという。

 同グループは19年10月、事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す「RE100」に加盟した。鉄道事業を含む企業グループとしては国内で初めてだった。

 東急電鉄では、駅の照明のLED化など省エネ施策を推し進めているほか、太陽光など発電事業の拡大も検討している。既に06年には東横線・元住吉駅、12年には大井町線・上野毛駅の駅舎屋根に太陽光発電システムを設置してきた。今後、鉄道ののり面などに太陽光パネルを並べることなども検討していく。

 東急百貨店(東京都渋谷区)なども傘下に持ち、多事業を展開する東急の広報担当者は「身近で象徴的な鉄道から環境に関する取り組みを進めることで、利用者が環境を意識するきっかけにしてもらう狙いもある」と話す。電車内で動画を流すなど、利用者への啓発も行うという。