2022.04.21 【関西版】東洋電子工業、気象衛星データの活用推進
複合した気象データを提案
東洋電子工業(京都府京田辺市)は最新の気象衛星の16種のセンサーのデータを組み合わせた詳細な気象データの提案や気象の特徴を抽出するデータ活用を推進している。雲や大気中の水蒸気の分布、風、海流などの動きを組み合わせ、一般的な気象現象だけでなく、火山噴火、黄砂、花粉の流れ、流氷の流れなど状況把握や検証などエリアによって必要な情報提供を推進する。
センサー16種組み合わせ各種詳細データ提供
国内の気象衛星は現在、ひまわり8号が運用されている。今秋にはその観測の主任務をひまわり9号に移譲。8号はバックアップの任務に当たる予定。これらの衛星は第3世代の地球観測衛星と呼ばれ、世界に先駆けて2015年から本格運用している。同社は第一世代の気象衛星の当時から高解像度地上局と呼ばれる受信処理システムを開発しており、内外の利用者に提供してきた。
現在の気象衛星システムにおいてもその運用が開始された直後にいち早く実用化しており、海外を中心に多くの利用者に提供。現在、アジア、大洋州の17カ国22気象局で同社のシステムが稼働している。ひまわり衛星には、地表に存在する大気の状態を観測することを目的として16種類のセンサーが搭載されており、このセンサーを用いて変化する気象を捉え天気予報に利用している。
同類の第3世代気象衛星は米国、中国が日本より2年遅れて運用。韓国、欧州でも今後の本格的な運用を目指している。「日本はほかの国と比べ運用実績があり、ノウハウや経験も持つ。これらの利点を生かし、16種センサーのデータを組み合わせたデータの活用を当社がシステムを導入した気象局に提案したい」と林夕路社長。
16種のセンサーで計測されるデータは個別、単独で利用されることもあるが、複数を組み合わせることでこれまでできなかった各種の詳細な気象の現象を把握するほか、特徴を抽出することができ、現在応用が各国で進みつつある。16種のデータの組み合わせは、膨大な数で未知な現象も含めさまざまな状態を把握できる可能性があるという。
「海流と気象データは大洋州の漁業に役立つ。霧と気象データは、よく霧が発生する空港施設で役立つ。データの組み合わせでエリアのニーズに合った気象データを提供できる」(林社長)。
今後同社は、第3世代衛星で世界に先駆けた技術を積み重ね、実績を生かし、複数データの組み合わせたデータを開発を積極的に推進。得られたノウハウを各国の気象局へ提供する方針だ。
豪雨災害に備える河川水位センサー
東洋電子工業(京都府京田辺市)は、近年各地の豪雨災害が顕著化になって注目されている河川水位を観測するための水位センサーを開発した。
自治体や京都大学防災研究所などで本格的な採用が進んでいる。今後は、導入箇所への普及台数を拡大し、面でも拡大を図る。
開発した水位センサーは水の誘電率を利用した誘電容量式で、安価で高精度、長期安定性を特徴とする。静電容量式水位計センサーには、3軸重力加速度計と温度計が搭載されており、センサーの傾斜角を自動補正した鉛直水深の測定が可能となるほか、水温による誘電率の変化も自動補正される。
開発は昨年4月に完了。以降九州で10カ月間の実証実験を実施していた。実証の状況は「想定通りに推移を観測した。気象情報と水位の観測を着実にできていた」(林夕路社長)という。今回のこの結果を踏まえ、商品化を行った。
この実証を踏まえ、自治体向けに本格導入が進行中。京都大学防災研究所では、同センサーを利用して和歌山県で河川水位のほか地下水位の計測も同時に行い、土砂崩れの危険性を早期に検知する研究に利用する。
林社長は「自治体向けで防災だけでなく治水の面でも活用を推進する。コストも10万円以下で導入でき、多面的に展開しやすい。ほかのエリアでの導入も推進したい」と語った。