2022.06.20 “虫を殺さない”LED誘虫器発売パナソニック、虫の目研究を応用
ナイター照明の下部に設置したLED誘虫器「ムシキーパー」
パナソニックは、昆虫の目にもたらす光の影響について2000年代から研究を重ねている。
「虫の目」研究は、同社の照明技術・ノウハウと融合し、LED誘虫灯の開発など害虫対策から、植物の病害対策、生物保全まで、さまざまな可能性を孕んだ研究となっている。
人間の目はおおよそ400ナノ~700ナノメートルの可視光領域が見えるが、昆虫は人の目には見えない短い波長の「紫外線」が良く見える視覚特性を持つ。
特により短い波長の光に引き付けられる特性を持ち、これを「すう光曲線」(誘引行動特性)という。
この「すう光曲線」を研究することで、光による昆虫の行動にアプローチし、照明に応用することで、生まれた商品がいくつかある。
その一つがLED誘虫器「ムシキーパー」(21年6月発売)だ。従来は光で虫を誘い、電撃して退治する器具を使っていたが、「ムシキーパー」は"虫を殺さない"のが特長だ。
運動場などのナイター設備の下部に設置して、ナイター照明が消灯したあとも点灯させておくと、ナイター照明に誘われ集まった虫が、引き続き誘虫器に集まり、これまでのように近隣住宅に虫が拡散することを防ぐ。
「ムシキーパー」は蛾・ユスリカなど5種類の虫の行動特性を踏まえ波長を調整している。
“虫を殺さない"のは「昨今世界的に昆虫の生息数が減少しているという報告があり、生態環境保全を考えた」(同社エレクトリックワークス社ソリューション開発部 青木慎一主幹技師)からだ。
このほか、現在「ホタルと共生できる照明」を神奈川県逗子市や横須賀市に納入、「虫の目」研究を活かした照明の活用範囲を広げている。
また2014年から発売している同社製UV-B電球型蛍光灯では、イチゴのうどんこ病とハダニ対策の病害虫同時防除の検証を進めるなど、減農薬・農家の労働環境環境改善につながる照明研究へと応用範囲を広げている。