2023.01.10 【製造装置総合特集】産業用ロボット、世界に拡大 生産の自動化・省人化へ 製造業離れで機運高まる

産業用ロボットの市場が世界に広がっている(22年9月、米シカゴで開催された「IMTS」)

産業用ロボットの需要が世界的に拡大している。少子高齢化や若い人たちの製造業離れなど就業者の減少から、生産の自動化や省人化のニーズが高まり、産業用ロボットの市場を拡大する。

 日本をはじめ、先進国の多くは今後、ますます少子高齢化が加速する。発展途上国においても、若い人たちの製造業離れが顕著になっている。製造業における就業人口の減少はものづくりの自動化、省人化のニーズを高め、産業用ロボットの活用を求める機運がますます高まり、ロボット産業の成長が期待されている。

 産業用ロボットは、生産ラインに設置して、人間の代わりに作業をする自動化装置。電機・電子、自動車、食品、医療など多様な分野で工場の生産ラインなどで製品の組み立てや搬送など幅広く導入されている。一方、商業施設で来訪者の案内などを行うロボットは「サービスロボット」と称されている。

産業用ロボットの種類

 産業用ロボットは「垂直多関節ロボット」「水平多関節ロボット(スカラロボット)」「直交ロボット」「パラレルリンクロボット」に大別される。また「協働ロボット」と呼ばれる新しい分類も行われている。

 垂直多関節ロボットは垂直方向の動作に重点が置かれた関節構造を持つロボットで「6軸ロボット」や「5軸ロボット」とも呼ばれている。

 ロボットの軸は人間の関節に近い役割を担っており、多くの軸を持っていることで、縦、横、斜めと自由に動くことができる。この動作の自由度を生かせば、複数のロボットに異なる作業を行わせることで、人のような共同作業が可能になる。

 水平多関節ロボットは水平方向の動作に重点の置かれた関節構造を持つ。垂直多関節ロボットよりもシンプルな構造をしているため、制御のしやすさや強度の高さが特徴。3次元の動きはできないものの、平面的な動きが正確かつ高速なため、主に基盤の組み立てや運搬作業に活用されている。

 直交ロボットは「ガントリーロボット」とも呼ばれ、主に直交座標系の軸構造によって構成されている。直線的な動作が特徴で、シンプルな構造なため、誤作動が起こりにくい、低出力で省エネといった利点がある。直交ロボットは合わせて使うことができ、誤動作の少ない直交ロボットと自由度の高い垂直多関節ロボットを組み合わせて、完全に自動化した製造ラインを実現できる。

 パラレルリンクロボットは関節を並列に配置したパラレルリンク構造を持ち、人の手先のような動きをする。最終出力先を複数のアームで制御するため、非常に高速な動作が可能になる。しかし重量があるものは扱えず、稼働範囲が狭いため、主に食品などの選定と整列に活用されている。

協働ロボット

 産業用ロボットは、作業者の安全のために柵や囲いで隔離することが法律で規制されていた。しかし、技術革新とともにロボットの小型化が図られ、また法規制の緩和により、出力が80W未満の産業用ロボットは柵なしで作業者との共同作業が可能になったことから、人との共同作業を前提とした新たな協働ロボットが製品化され、産業用ロボットの主流になってきた。協働ロボットの分類に入る2本の腕を駆使して複雑な作業をこなす「双腕ロボット」は、人とほぼ変わらないスペースで導入できることから、最近特に注目が集まっている。

広がるロボット関連産業

 産業用ロボットはマイコン、サーボドライブ、モーター、センサー、直動システムなどの組み合わせで動作する。

 サーボドライブに直動システムを組み合わせて、モーターの回転を制御することで伸縮、屈伸、上下移動、左右移動、旋回などの動作やこれらの複合動作を自動的に行う。

 周辺機器の一つに物をつかむロボットハンド(グリッパー)があり、FA、実装機、直動機器、機械、エレクトロニクス商社、機械商社などさまざまな企業が参入を始めている。このほか、産業用ロボットを飛び散る火花や化学薬品などから保護するロボット用保護カバー「ロボスーツ」といった製品まで登場している。

 また、部材では直動案内機器各社がロボットの市場の拡大に対応し、ロボットの旋回部に用いられるクロスローラーベアリング(クロスローラーリング)の品ぞろえを拡充している。

ティーチングの課題解決へ

 産業用ロボットは、専用機械に比べて汎用(はんよう)性が高く、プログラミングを書き換えることで多品種の製造に対応できることが大きなメリットになる。しかし、動作させるには専門的な技術と経験が求められる「ティーチング」というプログラミング作業が必要になり、作業者の教育コストや時間がかかる。このため、最近はロボットビジョンシステムの画像処理で品種識別し、自動で最適なプログラムを呼び出したり、人工知能(AI)を組み合わせることで、ティーチングを補助して自動化を可能にするなど技術の開発が進められている。ティーチングが容易になってきたことで、市場の裾野が広がっている。