2023.01.13 【放送/機器総合特集】ミハル通信 中村俊一社長
中村 社長
高周波とIPの技術を展開 2K/4K対応「ELL Lite」開発中
コロナ禍に加え、ウクライナ情勢などによるサプライチェーンの混乱が続いている中、コネクターなどの部材の供給不足が長期化し、顧客への納入が滞るなど苦しい状況が続いた。
当社は部材調達の強化や代替品への変更、装置の設計変更など、安定した納入に向け全力で取り組んできた。
昨年は放送サービスの高度化のためのインフラ整備として光化(FTTH化)への更新や館内自主放送システムの設備更新などが進んだ。今年も光化の更新需要に対応し、海外製品との価格競争に負けない、高性能マルチポート型光ファイバー増幅器などを展開していく。
ELLシリーズについては、これまで提案してきた世界最高水準の極超低遅延8K映像伝送システム「ELL8K」はさまざまなユースケースの実証実験を行ってきた。お客さまから高く評価され、既に受注を頂き2022年度内に納品予定。また、4K映像伝送の需要拡大により、2K/4K伝送に対応した「ELL Lite」を開発中で、23年度に製品化し本格的に市場参入を目指す。
昨年は映像のみならず、音声の低遅延伝送にも取り組んだ。音声は高音質で最大64チャンネルの出力に対応し、圧倒的な没入感を実現する。現在、低コストで導入が可能なELL Liteの非圧縮音声の低遅延伝送を進めている。昨年のInter BEEではELL Liteを使った「極超低遅延音声伝送システム」を初披露し、高い関心を集めた。
今までELL8Kで集めた要望や用途などもフィードバックして、ELL Liteの拡販を狙っていきたい。また、CATV以外の用途での活用も見えてきた。これまで使っているISDN回線終了によりIP化が進んでいるFM放送業界からも非常に注目されている。
8Kは放送のみならず、超高精細映像の特長を生かした監視・ライブ配信などでの用途で、4Kは音声と組み合わせながら提案していく。また、5Gなどのネットワークと合わせながら、トータルソリューションサービスとして提案していく。
一方で、CATV業界では設備の老朽化とともに、エンジニアの高齢化などによる人手不足も課題となっている。
当社はリモート保守サービスとして、21年より当社製ヘッドエンドシステム機器情報、ステータスをリモート監視・運用支援する管理プラットフォーム「M-3」を展開している。コロナ禍において現場での対応が難しい状況の中、現場に行かずにリモートで保守ができることで、好評を得ており、順調に加入者も増えている。さらに、監視対象機器の異常を知らせるメールを自動で選別し、不要なメールは削除し、送信先を担当者別に振り分けるメールフィルター機能も追加するなど、機能強化も行っている。現在、約70社が保守契約しているが、さらなる加入者の増加を目指したい。
社内では、IP時代において、昨年4月から「情報セキュリティ・システム推進室」を新設し、情報セキュリティーにも力を入れている。モノづくり企業として、モノづくりを強化しながら、ネットワーク、セキュリティーも強化する。お客さまとのネットワークの健全性にもつながると考えている。
23年度も部品供給の安定化が見えない状況が続くとみている。部品に左右されないためにもプラットフォームを共有化し、ソフトウエアに重点を置いたモノづくりに少しずつ移行していく。今後はこれまでCATVで培った高周波とIPの技術を放送業界にも展開していきたい。