2023.01.26 パナソニックHDが世界最高感度のハイパースペクトルイメージング技術開発
開発したハイパースペクトル画像撮影技術の概要(a):特殊フィルターを搭載したイメージセンサーの外観写真(b):特殊フィルターの光学顕微鏡写真(c):観察対象の光を特殊フィルターで“間引いて”検出するイメージ図
パナソニック ホールディングス(HD)は、世界最高感度でハイパースペクトル画像を撮影する技術を開発した。医療や宇宙探索の分野で活用が進む圧縮センシング技術を用いて開発した。今後、工場での外観検査などでの導入を目指し、高感度なハイパースペクトル画像撮影技術によるマシンビジョン用途の拡大を、パートナーとの共創も検討しながら目指す。
新技術により、肉眼では判別できないわずかな色の違いを、従来のカラーカメラと同様の操作性で識別できるようになり、画像分析・認識の精度向上が可能になる。
こうしたハイパースペクトル画像撮影を実証した世界初の研究成果として、ベルギーの研究機関imecと連名で光学分野の世界トップ誌・英国科学雑誌「Nature Photonics」オンライン版に24日(日本時間)掲載された。
新たなハイパースペクトル画像撮影技術では、複数波長の光を通す特殊フィルターを開発し、市販のイメージセンサー上に搭載。通ってきた光(波長)を、独自のデジタル画像処理アルゴリズムによりデータ復元する。
特殊フィルターは、観察対象から放たれた光を、画素ごと・波長ごと強度をランダムに変えて通すように設計され、色情報を効率的に間引いて検出する。
複数波長の光が通るためイメージセンサーが検出する光が増え、感度が向上する。開発した特殊フィルターは入射光のうち約45%を通し、従来技術における光利用効率(5%以下)に比べ約10倍高く、世界最高の感度となる。
一般的なオフィス照明程度の明るさ(550ルクス)でも明瞭に撮影できる。今回、開発した特殊フィルターとソフトウエア上での色復元を用いて、可視光線(波長450~650ナノメートル)の領域を20波長に分けたハイパースペクトル画像の撮影に成功した。
20波長と非常に多くの色情報を検出できるため、赤・緑・青の3色のみを見分けられる肉眼やカラーカメラに比べ、画像分析・認識の精度が向上する。
また、感度が高いため短いシャッター時間で撮影できるほか、ソフトウエア上での色分離を独自のアルゴリズムで高速化することで、フレームレートが30fpsを超えた高速なハイパースペクトル画像取得に成功した。ピント、位置合わせなどの操作を容易にする。
生鮮食品の鮮度や医薬品の検査、人の目では判別できない塗装ムラの検出など、幅広い応用が期待できる。
(後日の電波新聞先端技術面/電波新聞デジタルで詳報します)