2020.01.27 【ルームエアコン特集】
今年も前倒しの提案が重要なルームエアコン
前倒し提案がより重要な年
ルームエアコンは、天候要因に左右されながらも買い替え需要の顕在化や寒冷地での普及拡大、部屋別設置の伸長により、堅調な推移が見込める。20年のエアコン商戦においては、オリンピック関連の特需が考えられる一方、キャッシュレス決済ポイント還元制度の6月終了による駆け込み需要も考えられるため、今年は前倒しでのエアコン提案がより重要となりそうだ。
キャッシュレス決済ポイント還元 6月終了で駆け込み予想
19年のエアコン市場は、まさに夏場の天候要因に大きく左右されるとともに、消費増税に伴う駆け込み需要、その反動に見舞われるなど、目まぐるしい展開を余儀なくされた。それでも、全体としては高い水準での安定した需要があり、近年の猛暑・酷暑傾向から考えると、今年も販売店のビジネスをけん引する重要な商材として存在感は強い。今年に向けた各社の新製品も投入されている。省エネ性能はもとより、IoT化が加速して、より使い勝手の良い商品や、買い替え需要を顕在化させる魅力的な商品がそろっている。
今年は、キャッシュレス決済ポイント還元制度が6月に終了の予定。そのため再びの駆け込み需要が予想されている。需要刈り取りに向け、早めの提案が今年も重要なテーマとなりそうだ。
見込み獲得へ 2-3月から〝種まき〟必要
市場動向
ルームエアコンは、年々快適性や省エネ性が向上し、室内空間の健康、清潔まで追求する機能が進化している。室内の空気質への関心が高まる中、ユーザーにとって、ますます重要な商品となっている。
19年度の場合は夏場の天候不順の影響により、7月単月だけ見ると前年を大きく割り込んだものの比較的前半戦が好調に推移したこと、また8月以降の猛暑到来や消費増税前の駆け込み需要もあって、上期は堅調に推移した。10月以降は消費増税の影響で、前年を割り込むことも想定されるが大きく落ち込まず、年間通しても900万台以上の需要が見込まれる。「19年度通期は、前年度より下がる見通しだが、大きな落ち込みはなさそうだ。ただ20年度はさすがに厳しい。平夏ベースで事業を組み立てていくが、19年度より落ち込むのではないか」(ダイキン工業・舩田聡常務執行役員空調営業本部長)と見る向きもある。
20年度はこのため、需要獲得に向けた緻密な戦略が求められそうだ。まず前半戦(4-9月)は、キャッシュレス決済ポイント還元制度が終了する6月が駆け込み需要によるヤマ場となりそうで、ここに照準を合わせ、6月に入る前までにどれだけ需要を取り込めるかが大きなポイントとなる。
6月に駆け込み需要がくるのは、何もエアコンばかりではなく、洗濯機、冷蔵庫もあり、最も多いのは大画面・高精細テレビと考えられる。オリンピック開催を控えて、〝どうせなら〟とポイント還元のあるうちに買い替えようとユーザーが動くことは容易に想像がつく。そうなると、販売店の6月商戦は、大変な忙しさに見舞われる懸念もあり、設置・施工に時間を取られるエアコンは、できるだけ6月に集中しないように、早期提案・刈り取りが大きなテーマとなる。
早期刈り取りに向けて、大事なのは需要顕在化に向けた〝種まき〟作業であり、2月、3月からでも見込み獲得に向けた地道な提案活動は重要となる。
19年度は、猛暑によって過去最高の出荷台数を記録した18年度(前年比8.4%増の981万5000台)を経験したユーザーが、比較的早めにエアコンの買い替えに動いた年でもある。各社の手応えを聞いても、19年度の前半4-6月期は好調なスタートを切ったところが多く、ユーザーは〝暑くなってから〟買い替えることは控え、〝どうせ暑くなるから〟早めに買い替えよう、というマインドを持つユーザーも増えている可能性がある。
販売店も、19年度は比較的に早期提案への取り組み意識が強かった。今年も引き続き、早めの動きで見込み客づくりを図ることで、エアコンビジネスの活性化につなげることが大切だ。早期提案は、天候要因に左右されないビジネスを実現できる点でも大きなメリットだ。
一方、伸びる要素もある。寒冷地でのさらなるエアコン普及だ。暖房性能が格段に向上した寒冷地向けエアコンにより、冬場でもエアコン暖房を使えることが寒冷地域でも浸透している。寒冷地でのエアコンの普及は単価の安い、冷房用途から始まっている。それが、寒冷地向けの暖房性能が向上した高級エアコンに関心が高まることから、こうした地域では単価アップにつなげられる。
メーカー各社では、寒冷地エアコンの開発にも力を入れており、付加価値の高いエアコン需要が期待できる。このほか、部屋別普及が進んでいることもこれからのエアコンビジネスを盛り上げる要素となる。
内閣府の調べでは、2000年の世帯平均保有台数が2.4台だったが、18年には3.1台まで増えている。リビングへの設置はもとより、子ども部屋・寝室などへの普及が進んでいる。各部屋においても快適性や省エネ性、健康的な空間へのニーズは高い。このため、メーカー各社はこうしたニーズに対応して、コンパクトでデザイン性、快適性に優れた商品開発にも力を入れている。部屋別普及をより強める商材もそろっていることから、既購入世帯であっても各部屋へと視点を広げたエアコン提案も大切となっている。
快適・省エネ・清潔など 高付加価値モデルを強化
商品動向
天候要因や景気対策での変動要因があるものの、今年のルームエアコン需要は総じて安定して大きな需要が見通せる。いかに暮らしの中で価値の高いモデルの提案を強化していくかが、エアコンビジネスの大きなテーマとなる。
ルームエアコンにおいては、省エネ性能、IoT対応、気流制御など快適性能、空気清浄機能など健康機能、内部クリーン技術などの清潔性能、コンパクト・高性能な室内機の開発などデザイン性の向上、さらには睡眠に最適な空調提案など、様々な切り口で進化が図られている。
このうち、省エネ性能については、ハード的な進化はほぼ限界といわれるくらいまで向上しており、近年ではIoT化による、ソフト的な使い方でのさらなる省エネを目指す動きも活発となっている。
スマホやサービス連携へ 無線LAN内蔵を進める
エアコンのIoT対応
エアコンのIoT化が進展している。さらなる利便性や快適性につながる提案が中心で、メーカー各社はフラグシップ機を中心に無線LANモジュールの内蔵を進めている。スマートフォンからの遠隔操作のほか、自社が持つ他製品やサービスとの連携も始まっている。
ここ数年でエアコンのIoT化が急速に進み、スマホの普及とあわせてIoTに対応した機器も増えてきた。ユーザーのIoT化に対するハードルは下がってきており、生活を豊かにする機能として使われ始めている。
従来は別売りの無線アダプタの取り付けが必要だったが、無線LANアダプタを内蔵するモデルが増え、取り付けが不要になったことも普及を後押ししている。IoT化するための手間が大幅に減るからだ。無線LANアダプタを標準搭載するエアコンを展開しているのは、パナソニック、ダイキン工業、富士通ゼネラル、三菱電機、日立グローバルライフソリューションズ、東芝ライフスタイルなど。主要メーカーで対応が進んでいる。
ダイキン工業は「うるさらX(エックス)」で、新開発した専用アプリ「ねむロク」と連携し、入眠時や起床時間に合わせてエアコンが自動で室温を調節する機能を実装した。睡眠の質を高めるとともに睡眠状況をスコア化するなど楽しみながら快眠をサポートすることを新提案している。さらに同社製の空気清浄機とも連携。エアコンの湿度制御と合わせて除加湿を自動的に開始することで、目標湿度への到達スピードを早めたりする。
パナソニックは気象情報から空気環境の変化を予測して、空気清浄運転を自動で開始するなど、人が何もしなくても快適な環境を実現するサポートをIoT化で行う。富士通ゼネラルもIoT化を生かし、クラウドとエッジ両方にAIを搭載。センサーと組み合わせて、よりユーザー好みの室内環境を自動で実現できるように新モデルで進化させている。
三菱電機は「霧ヶ峰」FZシリーズで、専用アプリを使って外出先から遠隔操作できるようにしたほか、高精度化した赤外線センサーを生かし部屋の状況を熱画像で確認できるようにした業界初の機能も実現している。日立や東芝もスマホによる遠隔操作を基本とし、独自性を打ち出せる機能の実装を模索する。
自社でほかの家電製品をラインアップするメーカーは、今後それらとの連携を加速していくはずだ。既にパナソニックはLED照明に加え、布団の西川が提供するマットレスと組み合わせた睡眠サービスを実現。外部パートナーとも連携している。
エアコンのIoT化は現状、スマホからの遠隔操作が中心ではあるが、それ以外の付加価値も徐々に実現されつつある状況だ。