2020.02.18 三菱電機 エアコン「霧ヶ峰」FZシリーズが省エネ大賞受賞、自動で最適な気流に調整

3年連続で省エネ大賞を受賞したルームエアコン「霧ヶ峰」FZシリーズ

高精度な赤外線センサーを活用し、部屋内の熱画像をスマホで確認できるようにした高精度な赤外線センサーを活用し、部屋内の熱画像をスマホで確認できるようにした

陸域観測技術衛星2号「だいち2号」にも搭載した赤外線センサー技術を活用陸域観測技術衛星2号「だいち2号」にも搭載した赤外線センサー技術を活用

 三菱電機のルームエアコン「霧ヶ峰」FZシリーズが、19年度「省エネ大賞」製品・ビジネスモデル部門で「省エネルギーセンター会長賞」を受賞した。

 省エネ大賞は、省エネルギーセンターが主催し、経済産業省が後援となって運営されている。工場、事業所などでの優れた省エネ事例や、省エネ性に優れた製品・ビジネスモデルを表彰するもので、1975年に始まった歴史ある表彰制度だ。今年は1月29日に東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で表彰式が開催された。

 省エネの波及効果も重視

 製品・ビジネスモデル部門の評価項目は、製品に関する先進性や独創性、省エネ性、経済性、環境保全性など多岐にわたる。優れた省エネ性を持つだけでなく、省エネの波及効果も重視される。今回は応募総数100件以上の中から「省エネ事例部門」で25件、「製品・ビジネスモデル部門」で27件の合計52件が受賞している。

 表彰式に出席した経済産業省の牧原秀樹副大臣が祝辞で「積み重ねが国全体の省エネに寄与してきた」と述べたように、毎年、省エネ大賞の受賞を目指し、メーカー各社は製品開発にしのぎを削っている。三菱電機も省エネ大賞に毎年応募する常連で、受賞に向けて新製品では、ハード面からもソフト面からもアプローチし、省エネ性を高めてきた。

 受賞したFZシリーズは、室内に置いた家具の配置による気流の影響を検知し、気流を目的地まで効率よく届けることができるエアコン。リビング空間にはテーブルやソファ、椅子など様々な家具がある。リビングの大型化など間取りも複雑になっており、特定の場所に温風や冷風が届かないといった課題が表面化してきている。

 「ムーブアイmirA.I.+」採用

 同社は、こうしたライフスタイルの変化に対応するために、人工衛星にも搭載された高精度な赤外線センサー技術とAI(人工知能)を組み合わせた「ムーブアイmirA.I.+」を採用した。サーマルダイオード方式の赤外線センサーで、ルームエアコンに採用するのは世界初だ。

 この赤外線センサーは、1年前のモデルに比べて画素数は80倍、感度は2.5倍と大幅に精度が向上している。この性能を生かすことで気流の到達先のわずかな温度変化も検知できるようになり、自動で最適な気流に調整している。

 8・6%の消費電力削減

 例えば暖房運転では、ムーブアイmirA.I.+が温風の流れを確認して目的の場所に届いていなければ風向を調節し、きちんと届けられるルートを探す。それをAIが検証、実行を自動で繰り返すことで学習し、最適かつ快適な運転につなげる。従来気流が届かなかった場所の快適性を向上させることで、前年同等機種比8.6%の消費電力削減を実現している。こうした点が評価され、FZシリーズは3年連続で省エネ大賞を受賞した。

 高精度な赤外線センサーの採用は、省エネ性の向上に加え、IoT時代の新たなサービスにもつなげている。部屋全体の高精細な熱画像を取得できるようになったため、インターネットを介してスマートフォンでそれを確認できる「サーモでみまもり」機能を実装した。外出先から部屋の状況を確認できる上、部屋内の温度ムラを把握することで、ユーザー自身の省エネ行動を促進することにも期待できる。

 ソフトとハード両面で省エネ追求

 三菱が実現した省エネ技術は、高精度な赤外線センサーというハードと、AIを生かしたソフト制御という両輪で実現したものだ。エアコンの省エネ性能は以前に比べてかなり高まっており、単にハードだけではその追求は難しくなってきている。

 省エネのカギを握る室内機の熱交換器は、省エネ性を追求して大型化が進み、これ以上の大型化は施工性からも難しいとの見方が強い。エアコンの心臓部ともいえるコンプレッサの改良も簡単ではない。そのため、省エネアプローチでは気流制御をはじめとするソフト制御が重視されており、三菱も両面からのアプローチをさらに強めていく方向だ。