2023.09.22 【育成のとびら】〈11〉上司の問いが部下のズレを防ぐ 「復唱」の一歩先へ
多くの人が上司や部下とのコミュニケーションに悩む一方、「あの人がリーダーになったプロジェクトはいつもスムーズ」「この部下はのみ込みが早くて、助かる」など、誰とでも円滑に仕事が進められる人材もいる。
そうしたコミュニケーション上手な人はどんな工夫をしているのだろうか、あるいはコミュニケーション上手な部下を育てられる上司は日頃から何を行っているのだろうか。
当社ラーニングエージェンシーが実施した2023年2~3月に研修受講者614人に行ったアンケート調査で、コミュニケーションにおける「認識や理解のズレ」を起こさないために、約9割が「お互いの認識が合っているか確認し合うこと」が大切だと考えていることが分かった。
さらに、情報を受け取る側の工夫として「こちらの認識が正しいかどうか確認するために、聞いたことを再度自分の言葉で復唱している」が最多で、約6割が実践していることも明らかになった(図1)。
この「復唱」は、情報を伝える側の工夫としても挙がっている。ただ、「こちらの意図が正しく相手に伝わっているかどうか確認するために、相手に同じ話をしてもらう」を選んだ人は約2割にとどまった。
コミュニケーションのズレを防ぐ基本的な方法としての「復唱」は、情報を受け取る側には一定以上浸透しているものの、情報を伝える側が確認を促す工夫としては割合が低いといえる(図2)。
声掛けも有効
「復唱」は、受け取り手の認識がズレていないか簡単に確認できる、汎用(はんよう)性の高いテクニックだ。さらに一歩踏み込んで確認したい場合は、情報を伝えた側が「じゃあ、今の依頼内容についてどこから手を付けるといいと思う?」「この業務をどうやって進めるつもりか、教えて」といった声掛けを行うとより有効だ。
受け取る側が業務手順や指示のポイントを、単なる「復唱」よりも詳しくアウトプットすることで、ズレがあった場合、その場で修正しやすくなる。
成長支援に効果
この「アウトプット型の復唱」は、指示を出す際など、ぜひ上司側から積極的に導入してみてほしい。情報の適切な授受とともに、部下の成長支援という面でも効果が期待できるだろう。
さて、上司と部下のコミュニケーションのズレをテーマとして取り扱うのは今回で最後になる。
繰り返しになるが、コミュニケーションのズレは、再説明、作業の手戻り・手直しなどを引き起こし、組織の生産性を下げる危険がある。
コミュニケーション力は生まれ持った才能やキャラクターによるものではなく、誰でも、どの職場でも、そしていつからでもスキルアップが可能な技術だ。そのことを、本テーマの締めくくりにもう一度強調しておきたい。
今回のアンケート結果を職場のコミュニケーションスキル向上と生産性向上にぜひ役立ててほしい。(つづく)
〈執筆構成=ラーニングエージェンシー〉
【次回は10月第2週に掲載予定】