2025.08.21 月に基地建設 安藤ハザマが宇宙事業構想の実現に意欲

安藤ハザマが掲げる「宇宙シェルター」建設の構想

 ゼネコンの安藤ハザマは、建設事業で培った強みを生かして宇宙開発分野の開拓に力を入れている。その展開を印象づける舞台となったのが、今夏に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれた「SPEXA‐国際宇宙ビジネス展-」だ。同社が描く宇宙事業の構想を紹介し、来場者の目を引いていた。

 同社は宇宙産業に参入するため、2024年10月に「宇宙技術未来創造室」を設立。強みとなる地下空間の構築技術やトンネルの建設ノウハウを応用し、月面などに安全な空間を構築することを目指している。

 そんな壮大な技術開発構想を、7月30日から3日間開かれた宇宙ビジネス展で披露した。1つが、月表面にある堆積物のレゴリスを用いた防護装置「宇宙シェルター」だ。月面には地上の100倍以上の放射線が降り注ぐため、人類が月面で継続的に活動する際には、人や機材を保護する空間が不可欠となる。そこで整備するのが宇宙シェルターで、仮設作業所や一次避難所などとして使う。

 月面に拠点を設けるための物資を地球から輸送すると莫大なコストがかかり、1キログラムあたり約1.5億円と言われる。現地のレゴリスで拠点づくりを進めると、コストを大幅に抑制できる。

 同社は、2030年代を視野に宇宙フィルターの実現に向けて検討。磨いた放射線の挙動解析や遮蔽技術を役立てることを狙う。

地下空間に構造物を構築

 2つ目が、2040年代を目標に月の地下空間に構造物を建設する「ルナ・ジオフロント構想」だ。地下を居住や研究・生産活動に必要な拠点として生かすことを想定している。

 月の地下には自然の空洞「溶岩洞」が存在しており、まず自律的に移動可能なロボットでその空洞の広さや形状を探索し、構築に適した場所を選定。次に、人が活動しやすいよう空洞を整形・補強する。こうして築いた地下空間は常時モニタリングし、安全性を確保し続けるという。

 同社フロンティア研究部宇宙技術未来創造室担当課長の榊󠄀原翼氏は「建築ノウハウを生かすために、地面がある月をターゲットにした。新規事業の1つとして、宇宙分野の開拓に注力していきたい」と意欲を示した。