2023.12.22 【育成のとびら】〈17〉部下を成長させる管理職のフィードバックの特徴とは

 上司が部下に業務上の問題点を伝えて、改善案をともに考えるフィードバックについて第14回から考察してきた。

 前回(第16回)は、管理職が部下の成長を促す効果的なフィードバックを行うためには、伝え方や傾聴力、読解力など多岐にわたるコミュニケーションスキルの体得と複合的な実践が必要になることを示した。しかし、それは一朝一夕にできることではない。

 長期的な視点でスキルの習得と向上に取り組むのは当然のことながら、それ以外に今、目の前にいる部下へのフィードバックにおいて改善できる要素はあるだろうか。

 当社ラーニングエージェンシーとラーニングイノベーション総合研究所が今年6~8月に484人の管理職を対象に実施した最新の意識調査で、管理職によるフィードバックのタイミングや頻度と、部下の成長度合いとの関係性について、興味深い結果が出た。

 まず、部下へのフィードバックの頻度について聞いたところ、「部下が非常に成長している」と答えた管理職は「即時」と答えた割合が最も高く44.4%だった(図1)。

 「成長している」と答えた管理職で「即時」と回答した割合は21.9%で、「あまり成長していない」が17.5%、「成長していない」が14.3%と、部下の成長度合いが低くなるにつれて「即時」の割合は減少していた。

 一方、「成長していない」と答えた管理職においては、フィードバックのタイミングは「特に決めていない」が最も多かった。

「対面」は必須か

 指摘すべき出来事があっても時間が空いてしまうと、双方の記憶があいまいになってしまったり、状況が変わってしまったりするため、時間がたってからのフィードバックは効果が発揮されにくくなるリスクが高い。そのため、フィードバックは「鮮度」も重要な要素になり得る。

 しかし、常に即時のフィードバックが実践できるとは限らない。在宅勤務などで、すぐに対面でフィードバックしにくい場面もあるだろう。ここで注目したいのが、部下の成長を感じている管理職の伝達方法だ。

 どの管理職もフィードバックは「対面」が最も多かったが、「非常に成長している」と回答した管理職では「チャットやメール」を活用している割合が61.1%とほかの層に比べて非常に高く、目立った(図2)。

 部下の成長を感じている管理職は、対面だけにこだわらず、チャットやメールなども駆使して、タイムリーなフィードバックを実践しており、それが部下の行動変容、そして成長につながっていることが調査から明らかになったといえる。

変化する管理職

 連載第12回からの本シリーズでは6回にわたり、部下を育て、成長を促すコミュニケーションの在り方を探ってきた。その中で見えてきたのは、今後、生き残る組織に求められる「管理職の姿」の変化だった。

 これまでの調査結果から明らかになった部下の成長実感を抱く管理職の特徴は「部下への傾聴」や「チャットなどを用いた即時フィードバック」など、旧来の上司と部下の関係性からの「変化」が見て取れる内容だった。

 昨今は外部環境などの変化のスピードが速まる一方で、企業では非定型の業務が増えている。今後、生き残る組織をけん引していくのは、自身の経験に閉じこもらず、他者の効果的な事例やデータ、専門家(プロフェッショナル)の知見などを貪欲に採り入れ、自身も変化し続ける管理職ではないだろうか。

 そもそも他者の行動を変化させることはとても難しく、自身が蓄積してきた経験だけに頼った解決には限界がある。先の読めない時代を生き抜く管理職にとって、ぜひ本コラムを解決のヒントにしてもらいたい。(つづく)

 〈執筆構成=ラーニングエージェンシー〉

 【次回は1月第3週に掲載予定】