2024.01.01 【AV総合特集】AV各社の24年事業戦略 カナック企画 金子高一郎社長

エンタメ、安心安全を軸に隙間埋める製品開発を強化

 自動車業界はCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる時代になり、市販カーエレクトロニクスの市場も大きな転換期を迎えている。当社は長年、カーナビゲーションシステムやカーオーディオの取り付けキットの開発と販売を続けてきたが、ここ数年は安心安全やエンターテインメントの提案を強化してきた。今年はエンタメや安心安全の領域で新たな製品展開を図るとともに、「こんなものが欲しかった」と思われる、隙間を埋めるような製品開発を強化していきたいと考えている。

 国内の自動車市場は部材不足の影響が落ち着き新型車の発売も相次いでいる半面で、ディスプレーオーディオ化が進んだり、CDなどが入らないメカレス機が増えたりするなどしている。この1年は、市販カーナビ市場は苦しい状況が続いているが、軽自動車をはじめオーディオレス設定のある車種も出ていることから、人気車種を中心に取り付けキットの開発を進めることで要望に応えていく。

 同時に、これまで進めてきたエンタメの領域をさらに強化していく。今年はアップルのカープレイやグーグルのアンドロイドオートとつながり、走行中でも同乗者がインターネット動画などを視聴できる機器を発売する。中国企業と共同開発し、カーリンキット・ジャパンとして端末を日本市場向けに展開していく。通常は走行中にインターネット動画などが視聴できないが、この機器を車載USBに接続すれば低コストで動画視聴が実現できるとみており、新たなエンタメ製品として提案していきたい。

 22年から本格的に展開を始めた、純正オーディオの音を改善する「ESシリーズ」も強化していく。これまでは純正オーディオに配線加工せずにパワーアンプやウーハーを取り付けられる純正サウンドアップ用コードのみを展開していたが、DSP(デジタルシグナルプロセッサー)の開発にも着手した。

 当社で長年音づくりなどの研究をしている技術者がマイスターとして、車種ごとに音の調整を最適化したデータを用意し、DSPとともに販売できるようにしていく。

 安心安全では、上空から俯瞰(ふかん)できる独自開発の全方位駐車支援システム「サテライトビューカメラ」を新型車に対応させていく。

 業務用途では、幼稚園や保育園の送迎バスの園児置き去り事故防止のための警報装置を発売したが、児童の送迎バスだけでなく、さまざまな送迎バスに装着する動きも出ているため、引き続き提案を進めていきたい。業務向けでは、新たにフォークリフトの安心安全を支援する後付けの装置も発売していく。

 24年も市場環境に不透明感はあるが、当社のやるべきことは多い。グループ会社でハーネスや産業機器の開発生産を手掛けるエレクスとのシナジー(相乗効果)も出てきている。

 取り付けキットの開発生産だけでなく、エンタメ関連や安心安全を実現する領域などでも当社とエレクスが連携して、世の中にない新しい製品を出せるようにしていきたい。