2024.01.03 【暮らし&ホームソリューション特集】’24各社の戦略 東芝ライフスタイル 小林伸行取締役社長

小林 社長

環境視点の取り組み加速
マイディアグループと連携強化

 昨年は、家電市場全体が厳しかったこともあるが、当社としては力不足の面があったことは否めない。夏の猛暑でもエアコンを拡販し切れず、売り上げを伸ばし切れなかった。暑さが続いたおかげで9、10月にエアコンが売れたことで助けられた面もあり、2023年度(1~12月)は売上高を微減で抑えることができた。営業利益も前年並みと黒字で着地した。

 当社にとっては円安の影響が大きい上、物価高も販売に響いた形だ。ただ、そうした中でもドラム式洗濯乾燥機や大型冷蔵庫といった付加価値の高い製品の動きは良かった。家電は10年ほど使うのが当たり前となっており、主力の6製品(エアコン、冷蔵庫、洗濯機、オーブンレンジ、炊飯器、掃除機)で納得して購入してもらうためにも、しっかりとメッセージを発信することが大切になっている。

 物流の「2024年問題」が目前に迫る中、利便性の追求を第一とする状況から、社会全体として我慢する段階に来ているのではないか。メーカーにとっても販売店にとっても、多少の手間になるとしても効率が上がる配送スケジュールで対応するなど、お互いがより協力していくことが求められる。

 SDGs(持続可能な開発目標)が重視されるようになり、例えば、製品の梱包(こんぽう)材に傷がついて返品されてきたものも、再資源化に回すのではなく、きちんと検査した上で再販するなどの取り組みも必要になってくるだろう。

 当社も昨年12月から傷がついたなどの理由で返品されてきた未使用品を社内向けに販売し始めている。

 環境視点では当社も、再生プラスチックを製品に使用したものもある。再生材を使うと色などが変わり、デザインにも影響してくる。ただ、環境の取り組みを支持する消費者が増えているのも事実であり、今後は環境面での取り組みをもっとアピールすることも必要だと感じている。省エネや節水といった経済性にも影響してくる点に関しては、IoTやAI(人工知能)を生かして加速していく。

 今年の市場環境は、決して楽観視はできないと思っている。世界情勢や物価高、為替など、不透明さが増している印象で、好転する可能性はあるが、厳しくみておく方がよいと思っている。

 白物家電を提供する当社は、キッチンやリビングなどの住空間で、消費者の共感を得られるような提案が重要になる。

 中国マイディアグループ(美的集団)が持つ技術を日本市場で生かすためにも、さらなる連携が必要。家電は使い終わるまでどれだけの価値を提供できるかが重要だと思っており、使い方の提案だけでなく、アフターサービスのレベルも高めていきたい。

 顧客の体験価値を高める提案に加え、製品が故障した際、お客さまのストレス軽減につながるような対応力を向上させる。日本市場で当社が存在価値を発揮できるようにすることで、今年度も増収増益を目指していく。