2024.01.03 【暮らし&ホームソリューション特集】’24展望 冷蔵庫

冷蔵庫はIoT対応も進み、新たな価値提案が始まっている

省エネ型の買い替え提案に焦点
IoT対応の利点を訴求

 冷蔵庫は毎年、買い替えを中心に堅調な需要が見込める市場だ。電気代の高騰が続く中、ランニングコストを抑える上でも、省エネ型冷蔵庫への買い替え提案が今年も焦点の一つになるはずだ。

 冷蔵庫は、省エネ家電への買い替えを後押しする地方自治体の補助事業の対象にされる傾向が強い。実際、15年や20年といった長期にわたって使っているユーザーも少なくなく、買い替えによって消費電力を半減できるなど、購入費を考慮しても利点は大きい。省エネ性能だけでなく、食材の鮮度保持性能や冷凍技術、収容力なども向上しており、デザインの選択肢も増えている。

 日本電機工業会(JEMA)の統計では、2023年度の冷蔵庫出荷は苦戦気味だ。昨年4~11月累計で230万6000台と前年同期比7.7%減という状況。冷蔵庫でも価格転嫁が進んでいることから、金額ベースでは5.8%減にとどまる。

 コロナ禍が明けてサービス消費への支出傾向が強まったことに加え、自治体による省エネ家電の補助金の後押しはあるものの、物価高による消費マインドの冷え込みや、巣ごもり時の一部需要の先食いも影響していると見られる。ただ、環境の変化により一時的に需要の増減が見られたとしても、普及率の高い冷蔵庫は中長期的な視点でいえば安定した市場だ。

 冷蔵庫ではIoT化も進み始めた。扉の開閉回数の管理といった基本的な機能から、庫内の状況をカメラで撮影し、外出先から確認して食材の二重購入などの無駄をなくそうとする提案も進む。扉の開閉をもとに遠隔地に住む両親の状況を見守るサービスも提供されるようになった。

 半面、冷蔵庫は食材保存と省エネ性という2点が重視される製品。IoT化による利点は理解がさほど進んでいない上、仮にIoT対応していても、インターネットに接続しているかは別問題になる。接続率を高めることは利用状況の把握にもつながるため、メーカーにとっては簡単接続を訴求することも重要になってくる。

 資源循環を重視したリサイクル技術の開発も進んできた。大型冷蔵庫を中心に、前面ドアへの強化ガラスの採用が増えている。日立グローバルライフソリューションズがガラス研磨システムを開発し、ウレタンや塗料をきれいに除去し、ガラス素材としての水平リサイクルを可能にするなど、資源循環型社会の実現に向けた取り組みが加速している。再生材の利用率も増えつつあり、環境視点の製品開発や取り組みは、冷蔵庫でも今後さらに重要になるだろう。

 コロナ下ではセカンド冷蔵庫の需要も盛り上がった。そうしたトレンドは消滅したわけではなく、変化するライフスタイルの中で定着、進化していくはずだ。今年も冷蔵庫の新しい一面を示すことで、需要を掘り起こせる可能性は十分にある。