2024.01.10 【電子部品総合特集】部品メーカートップに聞く 2024年の経営戦略 東京コスモス電機 岩崎美樹代表取締役社長

岩崎 社長

ヒーターなどの3本柱を強化

 2023年はロシアのウクライナ侵攻継続、台湾有事の懸念拡大、イスラエル・パレスチナの紛争勃発など、世界が一層の緊張感に包まれた年となった。

 当社グループが所属する電子部品業界について、電子情報技術産業協会(JEITA)による、電子情報産業の世界生産額見通し(23年12月発表)は、23年は前年比3%減となる3兆3826億ドル、24年は同9%増の3兆6868億ドルとなる見通し。

 一方、日系企業の海外生産分を含む世界生産額は、23年は前年比1%減となる39兆6843億円、24年は同5%増の41兆5638億円の見通しとなっている。

 当社グループの23年度上期は可変抵抗器部門の販売が前年同期比12.5%減と大きく落ち込んだものの、一部車載製品の好調が補完する形となった。また円安の追い風もあり、事業計画は達成することができた。

 下期に入っても中国市場の低迷は続いており、特に可変抵抗器など、厳しい市場環境が続く。

 24年の当社グループを取り巻く環境は、中国市場の景気停滞の影響、地政学リスク増大、エネルギー・原材料コストの高騰、また為替の円高リスクもあり、厳しいものになると考えている。

 当社グループでは、長期的に廃れない技術による製品であったことが競争力になってきたと考えているが、今後については、新たな技術・製品の開発が欠かせないと認識している。

 厳しい環境下ではあっても、研究開発の充実によって、①可変抵抗器②角度センサー③ヒーター--の3本柱を太くし、産業界の発展・成長に貢献するような新技術・新製品の開発・市場投入に向けた投資を積極的に進めていく。

 昨年春には、コア技術であるPTC材料の特性を大幅に改善したSW-PTCを開発し、米国化学学会で発表した。PTC材料は、その材料に通電することで、外部環境温度にかかわらず、制御回路なしでも特定の温度を維持するヒーターとして活用できる。この特性を持ったヒーターを新市場参入への足掛かりとする。

 急速に拡大する電波関連市場におけるミリ波帯レーダーの製品に照準を絞り、電波を阻害する氷雪を除去するヒーター機能付きレドームを開発するなど、新製品の開発を加速させる。

 さらなる企業価値向上を意識した企業運営を目指し、環境・SDGs対応を推進し、さまざまなステークホルダーの皆さまに理解を深めていただけるような取り組みを充実させていく。