2024.03.22 NTTとNEC、7280キロ長距離伝送に成功 12コア光ファイバーで世界初

シングルコアファイバー(左)と12コア結合型マルチコアファイバー(右)の断面

52キロメートルの12コアファイバーで実験が行われた(NEC提供)52キロメートルの12コアファイバーで実験が行われた(NEC提供)

 NTTとNECは、1本の光ファイバー内に光信号を伝送するコアを12本設けたマルチコアファイバーで7280キロメートルの長距離伝送実験に世界で初めて成功したと発表した。長距離伝送で課題だった品質劣化を、多重化した光信号を元の信号情報に復調するMIMO技術で補い実現した。将来的には約9000キロの太平洋横断を想定し、2030年ごろの実用化を目指す。

 既存の光海底ケーブルには、1本のファイバー内にコアと呼ばれる光伝送路を1本設けたシングルコアファイバーが用いられている。これに対し、マルチコアファイバーは、既存のファイバーの外径は変えずに複数のコアを設けて通信容量を増やすことで、通信の大容量化を図る技術。世界中で研究が進められており、NTTは12コアのマルチコアファイバーの技術開発を進めてきた。

 今回の実験では、NTTが12コアの結合型マルチコアファイバーと入出力デバイス、長距離伝送時の伝送路設計を評価する技術を開発。NECは、無線伝送で用いられるMIMO信号処理技術で長距離伝送に対応できるアルゴリズムを開発した。

 NECアドバンストネットワーク研究所ディレクターのル・タヤンディ・ドゥ・ガボリ・エマニュエル氏は「大西洋は横断できる距離の実験に成功した。今後改善を重ね、約9000キロの太平洋横断を目指したい」と話した。

 NTTアクセスサービスシステム研究所の坂本泰志特別研究員は今後のマルチコア数の拡張について「学会では最大19本まで報告されており、拡張していく可能性はあるが、ほかの特性とどう両立させるかの難易度が高い」と指摘した。

(25日の電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)