2024.06.21 【やさしい業界知識】 配電・制御機器

電力系統変圧器の冷却に植物油を採用

電気を届けコントロールする

太陽光発電など再エネ普及で新製品も

 「配電機器」は、発電所で作られた電気を鉄道、工場、ビルなどの産業施設、商業施設、家庭まで安全に届けるために使用される電気機器の総称だ。変圧器、真空遮断器、保護継電器、避雷器、キュービクル、電磁開閉器、受電盤、配電盤、進相コンデンサー、直列リアクトル、漏電遮断器、電力計など、さまざまな機器がある。

 発電所で作られた電気が送電線を流れる際、電線からの電気抵抗で発熱し電力損失が生じる(ジュールの法則)。発熱を抑えて効率よく遠くまで送電するために、段階的に変電所で電圧を変え、高電圧で送電されている。

50万Vから100Vへ

 電圧は国によって異なるが、日本の場合、各電力会社の発電所で作られた電気の電圧は数千~2万Vだ。発電所に併設された超高圧変電所で27万5000~50万Vの高圧に変え、送電線に乗せる。その後、送電途中の変電所で6万6000Vに、次に2万2000Vに、さらに6600Vに変電される。

 一部は鉄道会社や大規模工場などに配電するとともに、街中(地中化も進む)の電線に送られる。そして電柱の上にある柱上変圧器で100Vまたは200Vに変圧して各家庭に引き込まれる。

 数万Vの電気回路を遮断する際、単に家庭の電源スイッチをオン・オフするようにはいかず、この場合は真空遮断器が用いられる。高真空の容器に電極を収めた構造で、電極間のアークを消滅させて電路を遮断する。

 「制御機器」は工場などに送られてきた電気によって動く装置をコントロールする機器の総称で、操作用スイッチ、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラー)、FA(ファクトリー・オートメーション)システム機器、検出用スイッチ、制御用リレー、制御用専用機器などがある。

 太陽光・風力発電、バイオマス発電など再生可能エネルギーの普及が進む中、配電・制御機器分野でも新たな製品やシステムも増加。例えば太陽光発電は直流のため、交流変換するパワーコンディショナーを使って電気を家庭で利用している。

管理システム活用

 省エネを目的とした電力・エネルギー管理のスマート化のためにHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)、BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)など、カーボンニュートラルを意識した管理システムも活用されている。

 環境への意識は材料にも影響。電力系統の変圧器の巻き線と鉄心の絶縁や冷却に使われる鉱油の代わりに、パームヤシや大豆油由来の天然エステル油などを採用することで環境負荷を抑えた製品も登場している。(毎週金曜日掲載)