2024.07.25 【半導体/エレクトロニクス商社特集】エイブリック 高付加価値品創出と新製品開発継続

田中 社長

 エイブリックは、ミネベアミツミグループが掲げる中核事業「8本槍(やり)」の一つとしてアナログ半導体事業を展開する。近年の事業譲受やM&Aによるシナジーを最大限に発揮し、高付加価値製品の創出と新製品開発を加速。体制強化にもつなげ、さらなる成長を目指す。

 2025年3月期上期は、市場在庫の解消が想定通りに進まず全体的に弱含み。本格的な需要回復はもう少し先になりそうだが、中国ローカルスマートフォン向けなど、改善がみられるものもあるとの見方を示す。

 そうした状況の中、同社は高付加価値製品の創出に力を入れる。その一つが医療用ICだ。16年に日立製作所から事業譲受した医療用IC事業をバックボーンに、超音波診断装置向けなどで実績を伸ばしている。

 田中誠司代表取締役社長執行役員は「医療機器のトップメーカーと緊密に連携した製品開発を行っている。当社ならではの高付加価値製品を生み出し、売り上げも事業譲受当時の数倍と大きく伸長した。高付加価値製品の成功事例として他製品にも横展開していく」と話す。

 高付加価値製品の創出と新製品開発を継続するには、強固な開発体制が必要となる。昨年3月、半導体設計に特化した企業SSCを買収した。大規模ロジック回路設計などの開発に強みを持つSSCとの相合(そうごう)活動を通じ、開発力の強化に取り組む。

 ミネベアミツミグループとしても積極的なM&Aを展開し、製品ポートフォリオを拡大している。今年5月には日立パワーデバイスを買収。IGBTやパワー半導体分野を強化し、エイブリックとのシナジー創出につなげていく。

 田中社長は「グループ全体のアナログ半導体事業として、現在の売り上げ規模約800億円から、28年度には2000億円にする目標を掲げている。目標達成に向けて、開発体制強化を目的とする投資を継続的に行う」と語る。

 今月、顧客とデザイン段階から連携を深めることを目的に幕張オフィスを開設した。高塚事業所(千葉県松戸市)にあった設計開発の一部機能を移管し、開発スピードを上げていく。