2024.12.03 【家電、正しく処分していますか?】<下> 再資源化のための役割分担
薄型テレビラインの解体と仕分け作業
廃家電は、消費者や事業者などの排出者から、家電を売る小売業者にリサイクルに必要な料金を支払って引き渡される。その後、小売業者が指定引取場所でメーカーへ引き渡し、リサイクルプラントで再資源化される。
プラントでは、廃家電を効率よくリサイクルするために、リサイクルラインの機械化や歩車分離などの改革を進めている。リサイクル技術の進化や工程の改善は、リサイクル料金を抑え、効率的な再資源化にもつながる。
全国には、326カ所の指定引取場所と、45カ所のリサイクルプラントがある。
関東エリアにある12カ所のリサイクルプラントのうち、東京都や神奈川県、山梨県、静岡県の指定引取場所から持ち込まれた廃家電をリサイクル処理しているのが、東芝環境ソリューション 家電リサイクルセンター(横浜市鶴見区)だ。指定引取場所としての役割も担い、東京都と横浜市、川崎市を中心に小売業者から廃家電を引き取ってもいる。
駅から近い都市部にあり、廃家電の受け入れ台数も多い。4月から家電リサイクル法の対象になった有機ELテレビの受け入れは、「月80~90台ほど処理している」(リユース・リサイクル事業部家電リサイクル部の三五宏幸部長)。
廃家電は、プラントで解体、破砕後、機械や手作業での選別などを経て、再利用可能な素材に加工され、製品や部材などに生まれ変わる。東芝環境ソリューションは、今年4月に洗濯機のリサイクルラインを機械化するなど、再資源化の効率向上に向けた取り組みも強めている。
プラスチックの選別システムも高度化が進んでいる。破砕プラスチックには、合成樹脂のABS樹脂(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)やPS(ポリスチレン)、プラスチック以外の金属などが混在している。
再資源化するために、水との比重差を活用して分別しているほか、水による振動と摩擦を利用して異物を取り除いたり、近赤外線ランプを照射しプラスチックごとに吸収波長の差を検知して分別したりする技術を取り入れている。
一方で、手作業の行程もある。作業者に負担がかからないよう、重量のあるエアコン室外機の持ち上げ移動は専用機器を使ったり、薄型テレビは機械を使ってリサイクルラインに投入したりしている。
リサイクル率をさらに高めるためには、家電を使う消費者の理解が欠かせない。家電リサイクルの情報発信や認知拡大に取り組むのが、家電製品協会(東京都千代田区)だ。
同協会の家電リサイクル券センターが、リサイクルシステムと料金の管理を行っている。川上景一専務理事は「廃家電の排出者である国民の皆さまに、家電リサイクル法について理解してもらうことが重要だ」とし、今後も家電リサイクル法の周知活動を継続していくことを強調している。
(おわり)