2024.12.10 【解説】生成AIを支えるAIサーバーメーカー

最新GPUを採用したAIサーバーソリューション

最新のラックソリューションについて説明する佐野GM最新のラックソリューションについて説明する佐野GM

 生成AI(人工知能)の普及が急速に拡大し、2024年はAIに関連した機器や製品、サービスなどが需要をけん引した年となった。AIを支えるGPUなどの半導体、膨大なデータを処理するために必要となるデータセンター(DC)、そしてAIをサービスとして提供するプラットフォーマーなど、多くの製品やサービスが話題となった。こうしたAIに関連した機器や製品、サービスに関わる企業が数多く紹介されているが、あまり知られていないのがAIサーバーメーカーだ。何かと話題の多いAI関連企業だが、今回はこのAIサーバーにスポットを当てて紹介したい。

 生成AIの開発を支えるマシンラーニングや膨大なデータを演算処理するためにはAIサーバーが必要となる。DCにも膨大な台数のAIサーバーが並べられ、接続することでスーパーコンピュータなども膨大なコンピューティングパワーを実現している。

 米スーパーマイクロはAIサーバー外販市場におけるトップグループの一角を占め、最先端のソリューションを提供している。22年度(22年6月期)に約7000億円だった売上高は、23年度で約1兆円、24年度は前年比110%増となる売上高約2.2兆円の実績を上げ、急速な成長を遂げている。まさに「AIブーム」の波に乗り、大きな成長を遂げた企業の一つだ。

 同社は1993年、カリフォルニア州サンノゼで創業。サーバーのほかストレージソリューション、ネットワークおよび組み込みソリューションを提供している。ちなみに同社の重要なパートナー企業であるエヌビディアも同年同地で創業しており、緊密な関係を構築し、ともに成長してきた。

 生産拠点として米国本社のほか、台湾、オランダに工場を構え、月産5000ラックの生産能力を有する。マレーシアで建設していた新工場は既に完成しており、年内中に稼働開始する計画だ。

 同社の特徴は最先端の技術をいち早く採用し、どのベンダーよりも早く製品を供給すること。こうした動きは開発現場からも歓迎され、日進月歩で技術革新が進むAIの開発を支えてきた。

 同社の最新ラックソリューション「GB200 NVL72」は、このほどエヌビディアが開発を終え、来年初旬から出荷を開始する最新のGPU「B200」を採用した製品。B200はエヌビディアが開発した次世代GPUアーキテクチャ「ブラックウェル」を採用したGPUで、スーパーマイクロのサーバーには72個搭載される。GB200 NVL72はエヌビディアのブラックウェルプラットフォームに最適化した熱設計、電力設計、ネットワーク設計を実現。スーパーマイクロ独自の水冷システムにより、生成AIに最適化した。

 日本法人の佐野晶ゼネラルマネージャーは「生成AIの学習向けでは水冷システムは必須。コールドプレートや熱交換ユニットから水を冷却するクーリングタワーまで自社開発を行うことで、発熱に関する厳しい要求に対応することができる」と話す。

 同ソリューションは、エヌビディアの次世代GPUが出荷される来年初旬に供給を開始する計画だ。最新ソリューションの提供だけでなく、既存のソリューションも着実に実績が拡大している。テスラCEOで実業家のイーロン・マスク氏が設立したⅹAIも導入先の一つ。世界最大規模のAIスーパーコンピュータークラスター「xAI Colossus」もスーパーマイクロのソリューションで構築されている。

 多くの企業が持つ独自技術が、生成AIを支えている。その重要な技術を提供しているのが、スーパーマイクロをはじめとするAIサーバーメーカーだ。今後も技術革新が続くAI市場において、AIサーバーは重要な役割を担う。