2025.01.08 【製造技術総合特集】産業用ロボット

22年に1兆円を突破したものの減少傾向にある日本市場22年に1兆円を突破したものの減少傾向にある日本市場

製造工程の自動化急務

中国が世界最大の市場に

 産業用ロボットは、日系や欧州系のメーカーが長い間、グローバルで高いシェアを占めてきた。しかし、政府の後押しもあり、中国産の産業用ロボットの生産拡大や国産化が急速に進んでおり、世界市場に進出してきている。

 総務省によると、日本の総人口は2008年をピークに減少に転じ、24年7月時点では1億2397万人。70年には8700万人に減ると推計されている。生産年齢人口(15~64歳)は、1995年をピークに減少が続き、30年に7076万人、40年に6213万人、50年には5540万人になると予測されている。

 少子高齢化に伴う生産労働人口の減少は、労働者不足に一層の拍車をかけるだけでなく、後継者不足や技術承継の問題をも招く。

 日本のみならず、欧州や中国も高齢化が加速。中でも中国は、少子高齢化が急速に進行するとみられている。

 国連が22年7月に発表した世界人口推計の中位推計によると、中国の人口は22年に減少に転じた。さらに、生産年齢人口は13年をピークに減少しており、22年の9億8430万人から50年には7億6737万人にまで低下すると推計している。

 製造業においても深刻な人手不足が顕在化している。比較的労働人口の多い東南アジアに労働力を求めていたが、タイやインドネシア、ベトナムといった新興国では人件費が上昇。さらなる高品質を要求される背景もあり、製造工程の自動化が急務となり、ロボット導入機運の高まりは世界的な潮流になってきた。

 国際ロボット連盟(IFR)によると、産業用ロボットの23年の世界出荷台数は54万1302台。世界で稼働する産業ロボットの総数は過去最高の428万1585台となった。25年も地政学的リスクが不確実要因であり、各国が重要産業の内製化を推し進めるとみられる。

 その中でロボットを用いた自動化は、コスト効率を維持した生産を可能とする手段として先進国を中心に成長が続く見込みだ。27年ごろまで成長が加速するとの観測もある。

日本 日本ロボット工業会によると、23年の受注額は8434億円、生産額は8916億円、総出荷額は9226億円だった。総出荷額が過去最高の1兆円を突破した22年と比較するといずれも減少した。半導体関連が回復するとみられる25年に再び1兆円に迫るとの見方もある。

米国 いまではドイツや日本の後塵(こうじん)を拝しているものの、米国は世界で初めて産業用ロボットを実用化した国である。1961年にゼネラルモータース(GM)などの自動車産業を中心にロボットが使用され始め、徐々に全米へと広がった。

 現在、米国市場では産業用ロボットの国産化が鈍化しており、日本や欧州の企業が競っている。ただ、製造や医療・ヘルスケア、農業といった分野でスタートアップが台頭し始めた。

欧州 欧州は、世界市場シェア1位のスイスのABBをはじめ、ストーブリ(スイス)、KUKA(ドイツ)、COMAU(イタリア)、ユニバーサルロボット(デンマーク)など、産業用ロボットの世界的な企業を擁する地域だ。世界の5大ロボット市場に属するドイツでは欧州総設置台数の28%を占め、イタリア17%、フランス7%と続く。

中国 中国はIFRのリポートでも世界最大の市場で、23年は世界全体の51%に当たる27万6288台の産業ロボットが新規で導入された。これは22年に次ぐ高水準。中国国内市場では国営の瀋陽新松(SIASUN、瀋陽市)といった自国メーカーのシェアが47%に拡大するなど、中国企業の成長が続く。

 4月には2年ぶりに、北京で世界4大工作機械展示会の一つ「CIMT2025(第19回中国国際工作機械展示会)」(主催=中国工作機械工業協会)が開かれる。ロボットの展示エリアが設けられる予定で、JAKA(上海)、ROKAE(北京)、FAIR(蘇州)、ELITE(上海)といった多くの国産企業が出展する予定だ。

インド 豊富な労働力を誇るインドは、製造業のデジタルマニュファクチャリング化が急速に進み、産業用ロボット市場の有望な国として注目されている。インド第3の都市・ベンガルールで今月開催される工作機械展示会「IMTEX2025」(主催=インド工作機械製造業者協会)には20カ国以上から約1000社が出展し、会期7日間で約10万人の来場を見込む。世界主要ロボット関連企業もブースを構え、最新の産業用ロボットがそろう。