2025.01.08 【製造技術総合特集】 金属3Dプリンター
金属3Dプリンターによる造形サンプル
材料供給方式は2種類
製造装置としての使用も
金属や樹脂を重ねて造形する3D(3次元)プリンターは、金型を作らずに設計データから試作品を製作でき、従来の加工方法では難しかった構造のデザインや部品の小型化、部品点数の削減などを積層造形によって実現する。
3Dプリンター市場は航空宇宙や自動車、金型、医療など、さまざまな業種・分野に拡大。FA、実装関連、産業印刷など電子・電機機器企業も市場に参入している。主に試作品の製造に活用されてきたが、現在は最終造形品や量産部品を製造できる3Dプリンターが多数開発されたことで適用範囲が広がった。
金属材料が使える3Dプリンターは、材料供給方式に粉末床溶融結合法(PBF)と指向エネルギー堆積法(DED)の2種類ある。PBFは金属粉末を平坦に敷き詰め一層ずつ溶融・凝固を繰り返し積層するため、複雑で高精度な造形ができる。
DEDは、熱源に制御性に優れたレーザー光を使用し、造形状態に応じた適切な入熱制御により溶接用ワイヤを溶融し、3次元構造を高品質に造形する。PBFに比べて精度は劣るが、造形速度が速く、必要な箇所に付加造形もできる。
樹脂3Dプリンターは試作品が最終部品としての特性を満たすことは少なく、製造は金属加工で実施というケースが多い。一方、金属3Dプリンターは機械特性が高い造形物ができ、生産効率によっては製造装置として使用することも可能だ。
金属3Dプリンターは特許権の関係から欧州が先行する。市場は欧州と北米が中心となり、日本は遅れている。
EV(電気自動車)の製造プロセスの新しい加工機として採用が進めば、CADデータを用いて海外の工場の3Dプリンターで補修部品などをつくることができる。3Dプリンターだけではなく、CADデータとデジタルツイン技術でシミュレーションも可能だ。
金属3Dプリンターは樹脂に比べてイニシャルコストが高額になる。顧客からの要望は購入前の造形テストがほとんど。受託造形ビジネスの市場が見込めることから造形受託サービスを始める企業もある。
装置納入後は材料供給として継続取引が可能になり、ストックビジネスとしての需要も期待できる。