2025.01.09 【電子部品総合特集】電子部品メーカーに聞く「25年の経営戦略」 電波新聞社アンケート〈上〉

 電子部品メーカー各社は、2025年に向けてもグローバルで積極的な事業を展開する。既存成長事業でのシェアアップに努めるとともに、中長期視点での新規市場や新規事業の開拓を推進する。電波新聞社では主要電子部品メーカーを対象に「25年の経営戦略」に関するアンケートを実施した。それによると、25年の電子部品市場は、年間トータルでは成長が予想され、各社の25年度の売上高・営業利益計画も積極姿勢が目立つ。アプリケーション別では、自動車関連を軸に、産業機器や通信インフラなどの分野での事業拡大を目指す。外部環境変化を踏まえた社内体制再構築なども重視されている。

3分の2の20社が「増」 堅調な拡大を予想

 2025年の電子部品需要 「25年の電子部品需要(24年比、金額ベース)」についての質問では、回答30社中、3分の2の20社が「増」と回答し、うち7社は「2桁以上の増」と回答した。「減」としたのは2社にとどまったが、「2桁以上の減」と回答した企業もみられた。

 24年の電子部品市場は、ICT関連の需要が回復に向かった一方で、産機市場向けの低迷が続くなど、分野によって明暗が分かれた。25年は、年序盤は産機・車載市場の停滞により、やや弱含みの推移が予想されるが、春から夏にかけて、徐々に需要が立ち上がっていくことが期待されている。一方で、米国新政権での経済政策変更や、中国や欧州での景気低迷長期化懸念など不透明要因も多い。

 そうした中でも、全体としては25年の電子部品需要は堅調な拡大を予想している企業が多い。

最も多かったのが「145~149円」

 2025年前半の円相場の予想(対ドル) 対ドルの円相場は、22年初以降、急速な円安が進行し、22年10月には一時、1ドル=約152円に迫るなど、22年は歴史的な円安進行の年となった。円安傾向は23年、24年も継続し、24年6月には38年ぶりに160円台に突入。

 24年の年末時点でも、150円台後半で推移している。電子部品メーカー各社の24年度期初時点の想定為替レートは、1ドル=145円前後の企業が多かったため、各社の輸出事業の採算性良化につながっている。25年前半の為替相場についての質問(対ドル)では、回答31社中、最も多かったのは、「145~149円」とした13社。それに次ぐのが「150~154円」の10社となっている。

 25年は米FRB(米連邦準備制度理事会)による複数回の政策金利引き下げが予測されているほか、日銀の金融政策の見直し観測もあり、いずれは為替が円高方向に修正される公算が高いが、年前半の段階ではそれほど急激な円高にはならないというのが各社のコンセンサスとなっている。

約8割の22社が「増」回答 「減」はなし

 2025年度の売上高目標 各社の「25年度の売上高目標(24年度見込み比)」を聞いた。それによると、回答28社中、最も多かったのは「10%未満の増」として14社。「2桁以上の増」とした企業も計8社みられ、全体では約8割に当たる22社が「増」と回答した。「減」とした企業はみられなかった。

 足元の部品市況はやや厳しさが見られているが、25年の電子部品需要は、ADAS関連の増加や、好調なAI関連などをけん引役に、産機関連の調整一服からの回復も含め、春先以降徐々に立ち上がっていくことが期待されている。各社は今後も、成長マーケットや成長する顧客へのアプローチを通じた事業拡大を図ることで、売り上げ拡大を目指す。

5割強の14社が「2桁以上の増」

 2025年度の営業利益目標 「25年度の営業利益目標」では、回答27社中、5割強の14社が「2桁以上の増」と回答した。「20%以上の増」と答えた企業は11社で、全体の約4割を占めた。全体では約8割の企業が「増」と回答し、「減」としたのは1社にとどまった。

 25年度の各社の影響利益は、増収効果に加え、各社の構造改革の進捗(しんちょく)や、電子部品の販売価格適正化などを通じた収益性改善も期待されている。

最多は「前年比並み」13社 投資対象は新製品開発

 2025年度の設備投資計画 「25年度の設備投資計画(24年度見込み比)」は、回答29社中、最も多かったのは「前年比並み」と答えた13社。次いで多かったのが「多少増額する」の8社。「減」とした企業は計7社だった。1年前の同様の調査では、「増額する」を「減額する」が上回っていたことと比較すると、積極姿勢が目立つ結果となった。

 各社の設備投資は、21年度はコロナ禍により不要不急の投資を抑制する動きも一部で見られたが、全体としては高水準が継続し、22年度以降も積極的な投資行動が継続している。24年度は前年度比横ばいを計画する企業が多いが、水準自体は高水準となる見通し。

 「25年度設備投資の主な投資対象」(複数回答)で最も多かったのは「新製品関係」の55ポイント。以下、「工場の自動化・省力化」が42ポイント、「海外工場の開設、拡張」が27ポイント、「国内工場の開設、拡張」が19ポイントとなっている。

 25年度は、BCP対応や地産地消などの観点から、国内生産体制拡充を計画している企業も多い(1位=5ポイント~5位=1ポイントとして集計)。

力を入れる市場は「自動車関連」

 2025年度の研究開発費計画 「25年度の研究開発費計画(24年度見込み比)」では、回答29社中、最も多かったのは「横ばい」の15社だが、全体では4割強の13社が「増」と回答した。「減」とした企業は1社にとどまった。

 「25年度に技術開発で力を入れていく市場・分野」(複数回答)では、最も多かったのは「自動車関連」の29社。次が「FA・産業機器市場」の23社となった。全体として自動車や産機など非コンシューマー系分野を重点分野に掲げている企業が多い。

 「3年後から5年後を視野に研究開発に力を入れる市場・分野」(複数回答)では、最も多かったのは「次世代自動車」の26社。2位は「医療用エレクトロニクス/ヘルスケア」の18社。以下、「次世代通信インフラ関連」「再生可能エネルギー」の順となっている。

 このほか、バッテリー関連、ロボット、AI関連、ウエアラブル機器など多様な分野に重点が置かれている。

 各社は、中長期の事業拡大に向けて、自動車や医療機器、5G/6Gインフラなどの高付加価値分野、高成長分野での事業創出のためのR&Dを強化する。

最多は「海外販売拠点を強化する」

 2025年度の販売体制強化策 「25年度の販売体制強化に向けた重点方針」(複数回答)の質問では、回答29社で最も多かったのは、「海外販売拠点を強化する」とした23社。「国内拠点を強化する」と答えた企業も13社に達した。

 「海外拠点を強化する」と回答した企業への「具体的内容」についての質問(複数回答)では、最も多かったのは「技術志向の営業体制を強化」とした18社。次いで「営業社員を増員する」が4社、「ERPなどのシステムの活用強化」が3社となっている。

 25年度に向け、既存海外拠点へのセールスエンジニアやFAE(フィールド・アプリケーション・エンジニア)の配置強化や、ローカル販売担当者の採用・育成強化を計画する部品メーカーが多い。