2025.01.08 AGC、米ラスベガスで先端材料ずらり
AGCのCESブース(現地時間7日)
【ラスベガス(米ネバダ州)=CES取材班】ガラス大手のAGCは米ラスベガスの家電・IT展示会「CES 2025」に、次世代の拡張現実(AR)/複合現実(MR)、2~3ナノメートルプロセスの先端半導体、自動運転車など幅広い用途に向けに多数の材料を展示した。同社をよく知る人、知らない人双方の興味をかきたてる工夫で、3年連続でCESに参加する経験を生かしている。
次世代AR/MR機器向けの「M100/200」は「CES2025イノベーションアワード」を受賞したガラス基板。視野角の広さと視界の鮮明さを両立するため、屈折率と透過率という通常は相反する性能をともに高めた。透過率は96%、屈折率は2.0を実現する。素材の組成の工夫と精密な温度管理など生産技術の改良によるもの。北米、欧州、中国、日本などで複数の顧客が量産に向け評価中で、2026年末~28年に最終製品が市場に登場する可能性がある。
半導体関連では回路形成などの前工程から、パッケージングなどの後工程まで、それぞれの分野に向けた製品をずらりと展示した。
最も注目を浴びるのは「ガラスコア」。2~3ナノメートルの先端プロセスで作ったチップと、より成熟したプロセスで作ったチップをひとつにまとめるチップレットを支える基板として有望な技術だ。面積の大きなチップレットに使えるよう従来の樹脂基板に比べ反りにくく頑丈。配線用にレーザーで面積あたりより多くの貫通穴を開けられるようになっている。セラミック基板より微細加工がしやすく、同じガラス基板を手掛ける競合に比べ材料と微細加工の技術をともに持つ点で優位と打ち出す。顧客となる半導体メーカーはデータセンター(DC)向けに28年ごろから採用製品を量産すると見通す。同分野は米国企業が席巻している状況を踏まえ「各社にあらためて技術を知ってもらいたい」(AGC)とCESに出展した。
自動車関連では、自動運転を実現するうえで重要な光による検知と測距(LiDAR)装置を保護する「ワイドアイ」を大きく押し出す。近赤外線を透過しつつ、外因性の故障や精度の低下を防ぐカバーガラス。不透明でバンパーやルーフのトリム、ウィンドシールドにLiDARなどのセンサーを隠すように配置できる。欧州企業の関心が高く、一部市場投入が始まったが、普及の本格化は先とみる。29年には各国で自動運転に関する法制度が整うと見通し、CES出展もそこへ向けた取り組みだ。