2025.03.26 【市場ルポ】〈奈良市〉出店相次ぐ量販店激戦区 選ばれる店へ切磋琢磨

ヤマダデンキYAMADA web.com奈良本店とケーズデンキ奈良柏木店が向かい合うように立地している。激戦区を象徴する場所

エディオン奈良三条大路店はエアコン売り場と連携した提案を進めているエディオン奈良三条大路店はエアコン売り場と連携した提案を進めている

地域密着で消耗品の品ぞろえを強化(上新電機奈良店)地域密着で消耗品の品ぞろえを強化(上新電機奈良店)

ネバーランドを充実させたエディオン奈良南店ネバーランドを充実させたエディオン奈良南店

 奈良市では昨年、量販店の新規出店が相次いだ。既存店のヤマダデンキ YAMADA web.com奈良本店とケーズデンキ奈良柏木店を取り囲むように、上新電機とエディオンが昨年2月から11月にかけて合計4店を出店。激戦区、オーバーストアとの声も聞かれる中、各店は取り扱い商品や売り場に工夫を凝らし、来店につなげている。

 出店が相次いだエリアには、奈良県と京都府をつなぐ国道24号と、奈良県と大阪府をつなぐ国道308号が通る。観光地の奈良公園や平城宮跡歴史公園などもあり、JR奈良駅や近鉄奈良駅、大和西大寺駅からは観光地に向かうバスも多く出ている。車のほか、公共交通機関でも回りやすい地域だ。

 大和西大寺駅前の近鉄百貨店内に出店しているケーズデンキ近鉄百貨店奈良店を除けば各店とも最寄り駅から徒歩約10~20分の場所にある。

 最も新しい、昨年11月22日にオープンした上新電機奈良店は、JR奈良駅から徒歩約10分のならまち大通り沿いに立地。上新電機奈良三条大路店とともに奈良市でのシェア拡大を目指す。

■地域密着型店舗

 同店は半径2キロメートル圏内を商圏と捉える。住宅街にある立地を生かし、地域密着型店舗として電池や管球類など消耗品の在庫確保に力を入れている。消耗品の品ぞろえを強化し信頼を得ることで、エアコンなど大型家電を購入する際に選ばれる店を目指す。

 2009年にオープンしたヤマダデンキ YAMADA web.com奈良本店は国道24号線の柏木町交差点付近に位置する。JR奈良駅からバスで約10分の場所に、インショップ型のケーズデンキ奈良柏木店と向かい合うようにある。

 同店の強みは品ぞろえ。約6610平方メートルの売り場で約4万アイテムを扱う。売り場では体感を重視しており、理美容家電や健康家電などは実際に使えるようにしている。

 近隣のアウトレット店が閉店したことに合わせ、リユース商品の取り扱いも開始した。川野正夫副店長は「シングル需要でも新入学を中心に購入されている。冷蔵庫や洗濯機、テレビはリサイクル品の買い取りもしており、ほかにはない強みになる」と力説する。

 ファミリー層の多さを意識し、入り口のそばにヤマダキッズカードのポイントがためられるポイントマシーンを設置。来店するだけでポイントがたまり、来店促進につながっている。

高齢化社会に寄り添う

 国道24号線の西九条町南交差点付近には昨年11月8日にオープンしたエディオン奈良南店もある。

 同店の入る複合商業施設「ニトリ奈良南SC」はファミリー層の来店が多いことから、おもちゃとゲームを扱う「ネバーランド」を充実させた。子どもが遊べるキッズスペースを2カ所用意したほか、父親世代にアプローチするため、ミニ四駆を走らせることのできるコースを設けている。

 国道308号の三条大路4丁目西交差点付近にはエディオン奈良三条大路店が昨年5月24日にオープンした。商圏は半径2キロメートル圏内。ファミリー層だけでなく、昨年9月に閉店したエディオンミ・ナーラ店を利用していた高齢客の来店もあるという。

■エアコンとリフォーム

 商圏内は一戸建てが多くオープン以来リフォームが好調だ。「地域最大級の品ぞろえ」(濱田淳店長)のエアコン売り場とも連携し、国の補助金「住宅省エネキャンペーン」を活用したエアコンとリフォームの同時提案を進める。

 濱田店長は「激戦区で、お客さまは複数の店舗を回られているのでは。その中で親身な対応をすることで選ばれる店になる」と力を込める。

 ファミリー層の来店が多いヤマダデンキやエディオンと一線を画し、高齢者の来店が多いのが上新電機奈良三条大路店だ。同店は、500メートルほど離れた奈良店(24年1月21日閉店)からの移転。半径5キロメートル圏内を商圏と捉える。

 来店客の中心は60代後半から70代。売り場面積が959平方メートルと同社の店舗の中で最も狭く、展示できる商品数は限られる。ただ、目移りせずに買い物したいという高齢者の利用が多いという。

 山室沙織副店長は「ゆっくりと選びたいというお客さまに来てもらえている。従業員との距離も近く、相談しやすい。高齢化社会でお客さまに寄り添えている」と話す。

 この一年で新店が4店オープンし、激戦区となった奈良市。各店は新たな商材の取り扱いや注力商品の品ぞろえ強化で他店との差別化を図る。各店の対応が市場にどのように影響していくのか、目が離せないエリアだ。

家電市場規模は年間66億円

 奈良市の人口は34万6490人、世帯数は16万8518世帯(3月1日現在)。総務省の家計調査によると、2024年の奈良市の1世帯当たりの家電への支出額は、冷蔵庫や洗濯機、電子レンジなどを含む家事用耐久財とエアコンなどの冷暖房用器具の合計で3万9510円だった。家電の市場規模は年間約66億円だ。