2025.03.26 女性特有のリズムを手軽に把握 TOPPANエッジのサービスが存在感 開発を率いた廣瀬チームリーダーに聞く

廣瀬チームリーダー

わたしの温度のデバイスと専用ナイトブラわたしの温度のデバイスと専用ナイトブラ

専用アプリ専用アプリ

 寝ている間に女性特有の高温期と低温期の周期を把握できる――。そんなIoTサービス「わたしの温度」が、女性の健康課題を解決する製品やサービスを指す「フェムテック」の分野で存在感を高めている。仕掛けるのは、TOPPANエッジだ。開発を率いたヘルスケアプロモーションチームの廣瀬久美チームリーダーに、サービスに込めた思いを聞いた。
◇ ◇
 生活者の健康意識の高まりを背景にヘルスケア市場が活気づく中、TOPPANエッジでは2017年から、身体に装着する「ウェアラブルヘルスケアセンサー」の開発が始まった。

 開発当初は並行して、心電図を測れるセンサーや乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防に役立つ「赤ちゃん見守りセンサー」などの企画も進められていた。

 そうした中、廣瀬氏自身も妊活(妊娠活動)を経験し、基礎体温計測の重要さや煩雑さを実感。「もっと楽にできるサービスを作れたら」(廣瀬氏)という思いで、わたしの温度の開発に力を入れるようになった。

 女性が一番妊娠しやすいのは「排卵日の2日前から前日」と言われている。排卵期に上昇する体温を正確に捉えることで、妊娠しやすい日を把握できる。従来の方法では、毎日決まった時間に起床して「4ケタ」の体温を測る必要があり、基礎体温の計測を続けるだけでも一苦労だったという。

 わたしの温度は、専用ナイトブラにデバイスを装着して寝るだけで、自動的に温度リズムを測り、その計測データを専用アプリに送信して管理。アプリ上で、その日の妊娠のしやすさや生理の予定日などを閲覧できるようにするサービスだ。

 温度リズムを把握できれば、ホルモンの変動も確かめられる。さらに妊娠しやすい時期や生理の周期を知ることで、体調に合わせたスケジュール管理も行いやすくなる。

社内理解で奔走

 こうした特徴を売りに2021年2月に市場投入したわたしの温度は、女性のニーズをつかみ着々と販売実績を積み上げているが、事業化までの道のりは平たんではなかった。

 もともとは印刷式の温度センサーを生かす予定だったが、探求を重ねて今回のサービスの形に行き着いたという。その間に廣瀬氏は、社内で協力者を集めるため奔走。イメージ絵やモックを作り、協力を仰いだ。

 男性には、イメージが湧きにくいサービスだったが、妊活に理解のある妻を持ち、事業化の意義に耳を傾けてくれた上司の応援に勇気づけられた。最終的には、約50人が開発や評価を手助けしてくれた。

使い心地を探求

 デバイスを含むサービスが完成した後も、使用者の使い心地をテーマに検証する活動を続けた。体温の周期を把握するために必要な計測期間は約1カ月だが、より正確に把握しようとすると約3カ月の計測が望ましい。

 同社はこうした点を踏まえて、検証を粘り強く重ねた。その期間は一回で約半年にも達した。その間に使用者の声を吸い上げ、サービスを磨き上げたという。

 廣瀬氏が日頃から大切にしてきたのは、社内でともに働く仲間の声だ。「とにかく周りの人に聞いて、みんなと一緒によりよいものを作り上げてきた」と振り返る。まさにわたしの温度は、協力者たちの知恵や意見を集める取り組みの「集大成」と言える。

 現在、わたしの温度のプロモーションに力を入れている廣瀬氏。妊活中の女性以外にも視野を広げ、「若い世代や更年期障害に悩む人にとっても意義のある展開をしていきたい」と強調。サービスを通じて、幅広い世代の女性のニーズに寄り添うことに意欲を示す。フェムテックを身近な存在にする廣瀬氏の挑戦から、今後も目が離せない。