2025.04.29 訪日客がAI活用のナビアプリで快適移動 GWの周遊にもひと役
駅の電光掲示板を撮影することで行き先を確認できる 出所:ナビタイムジャパン
ゴールデンウイーク(GW)に入り、全国の行楽地や観光地がにぎわう中、訪日外国人旅行客(インバウンド)が快適に移動できるよう支援するナビゲーションアプリが存在感を高めている。仕掛けるのは経路検索サービスのナビタイムジャパンで、スマートフォンのカメラでバス停や駅の電光掲示板を撮影すると行き先を確認できる新機能などを取り入れた。政府が国策としてインバウンド需要の拡大に取り組む中、今後も訪日客の課題解決につながる機能を拡充したい考えだ。
「乗車予定の電車が到着するホームにいるか」「乗りたいバスが発着するバス停か」――。そんな不安を解消してくれる新機能が訪日客向けナビアプリ「Japan Travel by NAVITIME」から登場し、注目を集めている。生成AI(人工知能)による画像認識技術を活用した機能で、アプリのルート検索結果とバス停や駅の電光掲示板などの行き先情報が一致しているかを確認してくれる。
具体的には、スマホのカメラを起動してバス停などを撮影すると、生成AIが経路を推定し、検索結果の路線と合致しているかを判定するという仕組み。正しい場合は該当時刻が黄緑色になり、乗車のアイコンが表示。異なる場合は、乗車予定の路線が含まれていないことを伝え、誤乗車を防いでくれる。訪日客はこうした機能を生かすことで、安心して電車やバスを利用し旅行を楽しめるようになる。
「オーバーツーリズム」にも対応
訪日客向けナビアプリは、訪日前の計画立案から旅行中の移動や旅行後の体験シェアまで一貫支援するアプリで、2013年10月に提供を開始。新型コロナウイルス禍を乗り越えて拡大するインバウンド市場を追い風に、13言語で提供するアプリの月間アクティブユーザー数は着々と増え、約200万に達したという。
ナビアプリの充実化にも取り組んでおり、昨年9月には、生成AIを活用して滞在日数に応じた旅行プランを提案する機能を追加した。さらに、訪日客の急増を背景に主要観光地が過剰に混雑する状態「オーバーツーリズム」への対応が求められる中、オーバーツーリズム対策機能も開発。24日から、京都市内のバス混雑緩和に役立つ訪日客向け「おすすめルート」の提供に乗り出した。今後も機能を開発したい考えで、カーナビゲーション機能の利用者への支援を検討している。
一方で同社は、訪日客の鉄道利用動態を分析する活動にも力を入れている。アプリ利用者の同意を得て取得したGPS(全地球測位システム)データや属性アンケートを生かした取り組みで、観光地周辺の交通対策などの一助を担いたい考えだ。同日には24年度の訪日客による鉄道利用動向の分析結果を公表し、ローカル鉄道や沿線地域の観光を楽しむ実態を浮き彫りにした。鉄道利用者数の増加率ランキングで1位となったのが福井県のえちぜん鉄道で、利用実績が23年度の約2倍に増えた。
データを駆使し地域観光を後押し
同社がアプリやデータを駆使して訪日客の周遊などを後押しする背景には、右肩上がりで成長するインバウンド市場がある。観光庁の発表によると、1〜3月期の訪日客の旅行消費額(速報)は前年同期比28・4%増の2兆2720億円。円安の影響を受ける訪日客の増加や宿泊費の上昇が消費額を押し上げた。
そうした中で官民の観光関係者は、訪日客がもたらす経済効果を日本各地に行き渡らせるという課題を重視。デジタルトランスフォーメーション(DX)を地方への誘客につなげる機運も高まる方向にある。同社トラベル事業部の毛塚大輔事業部長も「地方を快適に観光してほしい」という使命感を抱く1人。毛塚氏は「今後も訪日外国人が安心して移動できるサービスを提供するとともに、移動によって得られたデータを使って自治体やDMO(観光地域づくり法人)などに還元し、現地の観光振興を支援していきたい」と強調。その上で、「訪日外国人をさまざまな観光地に送り届けるような手伝いをしたい」と意欲を示した。