2025.05.16 「量子コン×スパコン」も 日本IBMと東大、量子コンピューターに最新プロセッサー 今年後半稼働へ
握手を交わす東大の藤井総長(左)と日本IBMの山口社長=16日、東京都文京区
日本IBMと東京大学は16日、量子コンピューター「IBM Quantum System One」に、世界最高水準の156量子ビットを誇る最新プロセッサー「IBM Heron」を導入すると発表した。両者協業による2度目の大型アップデートで、今年後半に稼働を始める予定。量子コンピューターの開発を巡っては、富士通と理化学研究所が4月22日に、世界最大級の256量子ビットの超伝導量子コンピューターを開発したばかり。国内外の産業界や学術界が最先端の量子計算資源を活用できる体制がさらに強化される。
IBM Quantum System Oneは、2021年に日本で初めて稼働を開始し、23年には127量子ビットの「Eagle」プロセッサーを搭載していた。今回導入されるHeronは、Eagleと比較して2量子ビットのエラー率が3~4倍改善し、全体のシステム性能も大幅に向上。最大5000回の2量子ビットゲート操作を高精度で実行可能となり、材料科学や化学、生物情報学、金融など幅広い分野での応用が期待されるという。
東大の藤井輝夫総長は、これまでの産学連携の歩みを振り返りつつ、「量子コンピューティングは、既存の手法では解決困難な地球規模・地域規模の課題に対して、新たな発想と知の融合によって解決の糸口を見出す技術」と述べ、「ロジスティクスの最適化、金融リスク管理、再生エネルギーの効率向上など、さまざまな領域での活用が期待される」と力を込めた。
東大が運用するスーパーコンピューター「Miyabi」との連携も計画されており、量子と古典のハイブリッド型「量子中心スーパーコンピューター」時代が視野に入った形だ。従来型スパコンの限界を超えた新たな計算手法が実現し、複雑な科学的・社会的課題の解決が加速するとみられる。
日本IBMの山口明夫社長は「今回導入するHeronは、量子ビット数、エラー率、演算能力の三つの観点で世界最高水準。より多くのアプリケーションやアルゴリズムの研究が加速する」と強調。スパコンと連携することで「2年以内に従来のスパコンの能力を大きく超える成果も期待できる」と展望した。