2025.07.08 【家電総合特集】洗濯機 ドラム式の需要が高まる 低価格・コンパクト型投入で
家事省力化ニーズを背景に、ドラム式洗濯乾燥機が拡大
洗濯機の市場では、近年大きな変化として、ドラム式洗濯乾燥機の需要拡大が挙げられる。需要全体の約3割を占める洗濯乾燥機のうち、今では主流だった縦型タイプから、完全にドラム式へと移行した。
ドラム式洗濯乾燥機は、2000年代初頭から本格的に登場し、大手メーカー各社が市場投入し、市場の裾野拡大に取り組んできた。ただ、ドラム式洗濯乾燥機は、高価格帯の商品が一般的で、ユーザーが限定されていた。
近年、ドラム式洗濯乾燥機の分野でも、普及価格帯のモデルが登場するほか、集合住宅にも設置しやすいコンパクトタイプの開発も進み、こうした商品戦略によって、ドラム式全体の需要が広がることになった。
ドラム式洗濯乾燥機は、洗濯から乾燥まで一気に仕上げる利便性はもとより、縦型と比べた場合に、節水性や乾燥性能に優れるなどの特長から、注目されるようになった。
加えて、低価格・コンパクトモデルの投入が進むことで、若年単身層や、集合住宅に住みドラム式を設置できなかったなど、欲しくても購入を諦めていたユーザー層の需要を掘り起こす効果も期待できる。
市場では、共働き世帯の増加や高齢化などで、家事省力化のニーズは高まる一方だ。洗濯に対するストレスを感じる人も多く、タイパ家電としてドラム式洗濯乾燥機への関心はさらに増えそうだ。
パナソニックの調査(25年2月/n=640)によると、ベランダ干しや室内干し、浴室乾燥でも、洗濯物を干す作業に10~15分かかるなかで、ユーザーには、「干す・取り込むが面倒」(63%)、「天気が気になる」(46%)、「部屋干しは邪魔(インテリアが台無し)」(31%)といった声が多かったという。
ドラム式洗濯乾燥機の場合、こうしたユーザーの不満を解消する特長がある。乾燥まで仕上がりもよく、干す手間が省けるのは大きな購入動機となる。
同社によると、ドラム式洗濯乾燥機を購入しない理由は価格、機能(乾燥が不要)、洗浄性能に不安、といったもので、これらの不満が解消された場合、ドラム式の購入意向は半数以上になったという。
日本電機工業会(JEMA)がまとめた、24年度の洗濯機の出荷台数は、前年度比98.1%の407万3000台で、4年連続のマイナスだった。
物価高騰が続くなか、買い控えが続いた影響からか、洗濯機全体の市況回復は不透明だが、ドラム式洗濯乾燥機は、健闘しているといえそうだ。
JEMAのまとめによると、24年度のドラム式洗濯乾燥機の出荷台数は前年度比103.9%の99万6000台と、100万台に迫る勢いだ。
全自動洗濯機全体で見ると4台に1台はドラム式が売れていることになる。年度として5年連続で過去最高を更新しているということで、25年度も引き続きこの傾向が持続しそうだ。