2025.07.18 個人健康データの活用促進へ 経産省が25年度内に介護分野で実証着手
ワコールの3D計測サービスを活用したヘルスケア体験のイメージ
経済産業省は、個人が持つ健康情報や医療データを表す「PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)」を活用したサービスの普及に向けて動き出す。PHR サービスを介護分野で実用化することを目指し、2025年度中に実証事業に乗り出す予定。今夏には大阪・関西万博で、PHRと連携するポータルサイト「PHR CYCLE」を通じて健康に関する体験の機会を提供した。培った実績をベースに、PHRを生かす領域を広げたい考えだ。
同サイトはPHRサービスを体験できる情報連携基盤で、経産省が構築した。大阪・関西万博のテーマウィーク「健康とウェルビーイング」と連動し、万博会場内の2つのエリアで6月21日から7月7日までの期間に「PHRがもたらす、新時代のウェルネスライフ」と銘打つ体験展示会を実施。そこに20の事業者による10のPHRサービスが展示され、来場者数は延べ9万人を突破した。
一つが、「3次元(3D)ボディースキャナー」から始まるヘルスケア体験だ。具体的には、ワコールが提供する3D計測サービス「SCANBE(スキャンビー)」に、食と健康に関するサービスを手がける asken(東京都新宿区)運営のAI(人工知能)食事管理アプリ「あすけん」を組み合わせた。会場内のスキャナーで自分の身体を測った後、そのボディーデータと食事管理データを確認するとともに、食事や運動のアドバイスを受けられるようにした。
健康的な生活習慣を楽しみながら身につける体験型コンテンツを用意したのがカゴメ。仮想現実(VR)を使って仲間と体内に潜入し、大切な人の健康を損なう敵を野菜の力で倒すゲームだ。NTTドコモのヘルスケアサービス「健康マイレージ」に、野菜摂取の習慣化を促すカゴメのアプリ「ベジクエスト」を連携。健康マイレージに記録された健康情報をもとにVRで戦う敵の種類や強さが決まるなど、変化に富むゲームを満喫できるようにした。
魅力的なサービスで利用者拡大
心身ともに健康に過ごすニーズが高まる中、国内でPHRサービスへの期待感が高まっている。適切に管理されたPHRが医療機関に広がれば、医師が診察の前後に患者の健康状態を確認できるようになる。生活者にとっては、PHRで自身の状態を把握し生活習慣の改善につなげられる。同サービスはフィットネスや食事管理にとどまらず、自動車や住宅などの周辺産業に広がる可能性も秘めており、2030年時点で約1兆円規模の市場に成長するとの予測もある。
一方で、PHRの認知度を高める取り組みは途上にある。そこで経産省は、PHRを活用する価値を生活者を含む全ての関係者に周知したい考えだ。商務・サービスグループヘルスケア産業課の明石順子課長補佐は「使えるPHRが増えている。それを生かして魅力的な民間サービスの選択肢を広げ、利用者の拡大につなげることが課題。国民1人1人の健康意識の向上につなげてきたい」と意欲を示した。